應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死13〔第二章〕・四十九日(幽冥界.黄泉)6

四十九日(幽冥界.黄泉)6


「さァ お客さん達、こちらの門からは同じ川渡りでも、船はデラックスで全席指定、ファストクラスの席もあるよ。水しぶきのある、ナイアガラの滝より大きい峡谷も見られ絶景だよ。一度しか渡れない旅を満喫しておいで・・・」

茶髪で、生前どこにでも転がっていたような若いおニイちゃん、たぶん大道野師か暴走族の亡者が、アルバイトで使われているのか? 門の前にその口上を聞く亡者たちが蝟集している。

三途渡りの切符売り場には、料金が表示され、日本以外各国の通貨も併記。 なんと阿修羅行きは直行でも日本円で10万円だ。 これは大変。ここでどれくらい働いたら貯まるのか、ショックの連続だ。

とにかく何処かでひと休みして、思案しようと辺りを見回した。
右手に石の丸テーブルような椅子に、腰掛けている10人ほどの集団がいる。そばへ寄って空いた場所に腰を降ろす。 隣の人に、あなた方も川を渡るのか、と聞くと意外な答えが返ってきた。

「いま、それぞれの四道から許されて帰ってきた。これから人間界へ戻るので、迎えのバスを待っている」

飛び上がるほど驚く。 改めてこの集団を見ると、覇気こそ無いが穏やかな人間らしい落着いた顏つきだ。 これから送られる生気の失せた亡者たちと、エラい違いだ。

坐っている中で、黄土色のシャツにフラノのジャケットを着た60才台の男性が、かいつまんで説明してくれた。
 
六道のうち、地獄.餓鬼.畜生.修羅.の四道に落とされた者でも、完全無限地獄ではない。 平たく言えば、前世の人間界で罪を犯して無期懲役になっても、牢獄で真面目に、模範囚として何年かオツトメすれば、改悛の情ありと仮釈放になるだろう。 こちらでもそういう仕組みになっている と云う。
いわゆる 輪廻転生 かと聞くと、
「それは四道の連中には適用されず、無限に続く。しかしたまたま五十六億七千万年の後、慈氏.すなわち彌勒さまの将来仏が現れたら、救ってもらえるものも居るらしいが。 まあ我々はその口ではなく、真面目に勤め、監視長やほかの鬼たちにも可愛がられ、運がよかった」という。
ああ そういうシステムと機会もあるんだ、と少し心が開いた。 が後ろ向きになって俯いていた人がため息まじりに、おれは帰りたくない と云う。
「ん?」
すると、6人が 俺も おれも と同調する。 
最初口を切った中年の男が、わたしの方に向き直り、帰りたくない理由を、 「いろいろこの世界の情報を総合すると・・」と前置きし次のように話した。

まず最近の地獄の有り様。 
現世の娑婆では小さい時から、少しでも悪いことをすると地獄に落ちると戒められ、善行を積むよう躾と規律づけられて来たが。 ところが最近の地獄は様変わり。

人間界の戦後しばらくは多死多産。 お陰でこの世に来る亡者が溢れかえり、ハコもの造りに励んで好景気が続いた。 またエンマ大王以下、鬼の幹部や官僚が予算の大盤振るまい、それに連れて贈収賄汚職が蔓延した。 

しかし人間の世が落着くに従って所得が上がり、医学の進歩や保健衛生が行き届き平均余命が延び、当然死ぬべき人も生体肝移植等で延命、送られてくる亡者が少なくなって歳入がガタ減り、これが第一原因。 
そこですぐ予算を削り、ムダを省く行政改革をやればよいのに、どうせ世界に70億人もいる人間、いつか必ず死人が増えると漫然と期待し、赤字債券の大量発行予算でしのいで来た。 これが様々な所に変化を齎した。

例えば灼熱.火炎地獄、リニュアルする予算がなく、大量消化時代の昔のままの、広い池を使っているから熱効率が悪く、おまけにエネルギーの高騰や予算不足で、温度が50~60度以上あがらない、丁度よい湯加減の温泉のよう。
遅ればせ乍ら、かのエン魔大王が経済学者や、識者と称する得体の分らん連中を集めて、ヤッキになって対策を求めているがさっぱり。
根本的な対策を取らず、変な官僚などが、整合性のない部分的な規制緩和を打ち出している。 その結果、
いま居る亡者の居心地をよくする為とか、弱者救済だ、などと称し、血の池地獄などは血の色に見せかけ、ワイン風呂にして亡者を喜ばせたり、飢餓地獄では飢餓どころか、今ではダイエット食材を工夫し、幾ら食っても肥え太らず、口いやしい女亡者や中年者にはエラい人気と云う。 

極めつきは、最初に帰りたくないとグズった男の居た畜生地獄。 近親相姦や、共に相喰む地獄であったが、身体障害者の多発.出生率の低下.医療費の増大から禁止された。 それだけではなく優生学上、血の入れ替えが必要という理由で、欧米人を多数移民させ、ある盛り場ではカネさへ払えば夜毎、酒池肉林が許されている、という。
この男はそのドームの管理を任され、さんざんいい目をしてきたらしい。 そう聞くと、帰りたくないのも分らんではない。 また隣の人は、
「これから人間に戻っても、また最初から小学校ー大学、セコイ社会のイジメにあい、ブスで気の強いだけが取り柄の、今どきのニョウボや病気とも闘い、出来た子もアホで苦労する。 それに最近来た亡者から聞くと、年金もロクに貰えない世になりつつある、と聞く。 そんな世界へ戻るのはイヤだ」
と宣う。 今まで居た前世をボロクソに云う。 
そのとおりなので黙っていると、周りの者も そうだそうだと相づちを打つ。 それに反し、先入観をもっていた地獄は、聞けば聞くほど人間界より逆にエエとこらしい。 少し希望が湧いてきた。

私が、これから行く阿修羅の世界を聞いてみるが、この集団には一人も、あそこからの帰り者はいないという。
「あそこは争い好き、嫉妬や執念深い陰気ものが行くとこで、もともと規制が緩やかで改革が後回しになっていて、ほかに比べて面白くないトコらしい・・それでも昔に比べりゃ甘くなったらしいよ」
 少し気落ちしたが、立上がった私に皆がいっせいに、がんばれ の励まし。 

 さてと、歩き出したが、やはり渡し賃だ。 地獄の沙汰も金次第 とはよく云ったものだ。




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よねぞうの死12〔第二章〕・四十九日(幽冥界.黄泉)5

四十九日(幽冥界.黄泉)5



やっと入口まで来た。 

入るまえ想像していたより、案外明るく学校の講堂ほど広い。
 
正面に裁きの法廷が設けられてあり、その手前に教室のような部屋が四つ、そこの一つに入って呼び込まれるのを、待つようになっている。

 よねぞうの番が来た。 一緒に部屋に入った、先程の女性が優しく頷いた。

法廷内は三段の高さに分れ、一番高い所に派手なほうを着た、冥界の審判官閻魔大王が座り、中段にうず高い書類と共に、倶生神(生前のその人全ての記録係り)と闇黒童子(エンマ帳係り)が侍り、廷吏は6人。
私は最下段の丸椅子に坐らされた。  
私を廷内に連れた来た廷吏は、私の左腕を掴み、型の古そうなウソ発見機のセンサーを頭に巻付ける。 中段右側の闇黒童子が厳かに宣言した。

「これから審判する おまえの過去は全て この証拠歴の中に記録されているウソ偽りを云えば すぐ機械が反応するから 有り体に申し上げイ」

時代がかったセリフだ。 もう一人の倶生神が、1mもあろうかと思うほど分厚い、私の娑婆歴犯科帳を繰りだした。

まだこちらの世界は機械化が遅れて、オフラインどころか大福帳式のようだ。
こりゃ時間がかかるわいと思ったが、案外早く審問が始まった。

 倶生神が
「おまえ 生前の行いのうち ケシカラン事をした それは11才の秋 学校の帰り 野の地蔵さまの頭に長々と小便を垂れたであろう」
とたんエンマ様の、机の機械がピッピッーと鳴る。 
びくっとしたが、そんな小さい頃のことを聞かれても、覚えているのがおかしい。 こんなことが六道を峻別する因となるのか。
心の底からあほらしいと思ったが、先程の機械の音が気になって思わず、  はい と答えてしまった。この悪いクセは、こちらにきても治らないようだ。
その他昭和34年赤線廃止まで、随分悪いアソビをやったことや、会社で上司や部下を虐めた事、特に女房としつこく云い合った会話を追認させられた。
生前は誰でもやるような、取るに足らない事柄を、芝居がかって詰問する。

と 突然、「太夫さまご審決を」と闇黒童子が上段に向って云った。
太夫さま と云われた閻魔大王。 エヘンと声の皮をむき、ほうの袖を合せ威厳を繕って 「よく聞くように・・」 と前置きし、
「おまえは本来なら六道のうち、上から2番目の人間界へ戻してやってもよかったんだが、先程おまえが認めた、地蔵様にお小水をかけた。 これは大変罪深い。 なぜなら地蔵菩薩は古えより六道の辻で、衆生を化導されておる、極楽にお導きなさっている菩薩じゃ。 その地蔵様に無礼極まる罪を犯した。 それにお前は気が小さいくせに欲深い、夢にもよくドロボーを追いかけて、うなされたであろう。それはモノに対して執着心が強い欲どしいからだ。 
 また許されないのは、折角女房が、おまえの子を孕んだにも拘わらず、自分たち自己益だけのために、何人も水子にしたであろう」


「そこで判決を云い渡す。  阿修羅行きじゃ!」


ええッ 阿修羅? ほんまかいな 修羅とは激しい闘争.激戦.ねたみや我慢強く猜疑心の強いものが行く所。 なんでおれが。 そのとき再び、
「もう一つ云い置くことがある。 三途の川を渡るときよく見るがよい。 賽の河原でおまえの犯した罪を償うて塔を立てようとし、石積みをしている水子たちをよく見て行け。 この子たちを救われるのも地蔵菩薩さまじゃ」。

両手の甲に 三途阿修羅行きのスタンプを押され、廷内から放り出された。
最後のご託宣は反論できず、生前罪の意識が片時も消えたことが無かった。  とにかく阿修羅の世界へ行くしかない。 蹌踉(そうろう)として覚束ない足取りで、賑やかに呼び込みをしている、ケバケバしい門の一つの前に行く。


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よねぞうの死11〔第二章〕・四十九日(幽冥界.黄泉)4

四十九日(幽冥界.黄泉)4


 寂とした黄泉の途を歩いて、三途の川のほとりに来て驚いた。

突然、一転して陽は照っていないが、眩しいほど明るい場所に出た。 

それはまるで球技場前の広場か、カーニバルの入口のような所で、喧噪を極めている。

 ざっと見渡した広場はアーチ型で、五色の色彩に溢れた門が三ケ所あり、各門の前で、衣装をこらしたピエロのような格好の男女が、大声で呼び込みをやっている。
 
広場の真ん中では派手なTシャツを着た、髪の毛を紫色に染めた青鬼や、白いアラビア風の裾の長いガウンに、袖なしの黄と黒の虎シャツを着た赤鬼たち10人ほどが、短いプラスチックの鉄棒を振り回し、陽気に様々なパホーマンスをやっている。 鬼といっても頭にそれらしい角を付けているだけで、風貌は人間と変らない。
どうやらそれぞれ六道へのゲートに誘導する為の競争らしい。

生前聞かされたり、想像していた光景とおよそ懸け離れていて、にわかに信じがたい。 思わず頬をつねってみる。

 右手前に岩組みの大きな建物があり、その入口に大勢の亡者が、縦四列に整然と並び、長い本当の槍を持った青鬼たちが、何人もその行列を監視している。
 何ごと? よく見ると入口上部に、大きな文字で、

「閻魔法王庁.六道(地獄.餓鬼.畜生.修羅.人間.天上)の選別所」

と大書されている。

私は監視している鬼の一人に ここは?と聞くと
「前世の業因によって、どの六道に行くかエンマ様が選別されておる、お前も並べ」と云い、有無を言わせず後尾に付かされた。

私より前に並んでいた、60歳台の男性が話しかけてきた。
「いよいよ極楽.地獄行きの、閻魔大王から裁きを受けるドタン場に来ましたな」 と気やすげに話す。 そして、
「この世もなかなか大変らしいですよ。娑婆が最近、えらーい平寿命が延びて、こちらへ死人がなかなか廻ってこなくって大不況、それでリストラばやりで。あそこで呼び込みやっている連中、みんなアルバイトらしいし、その上ここより娑婆のほうが大不況なんで、最近反対にこちらが通貨高になり、よけい不景気になっとるらしいわ」

なんとこちらの世のことを、よく知っている人だ。 つい、 
「えらいくわしいですな 一度こちらに来られたことあるんですか?」
聞いた途端、蔑むようなブ然とした顔で見返されたが、私のうしろに並んでいた、瓜ざね顔40才前後のきれいな女性が、くすっと控えめに笑った。



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よねぞうの死10〔第二章〕・四十九日(幽冥界.黄泉)3

四十九日(幽冥界.黄泉)3


さて元の娑婆に戻ってみると、部屋の中は酒席が盛り上り陽気に溢れている。 なんじゃ これは?・・・

「みなさん、ながらくお待たせしました。 では、これから鷹ちゃん(長男)一家がはるばる送ってきた、おじいちゃんを偲ぶビデオレターを写しまーす」

 あっこ(晶子)が怪しい興業師よろしく、前口上と共に、ガチャコ とテープをビデオデッキに放り込んだ。

バーンと鷹丸一家が居間に勢ぞろいした顔が写し出される。 のっけから画面の皆がいっせいに、

「おじいちゃん死んで49日 おめで・・(ねね.冬子)とうございまーす・・(春奈.竜くん)」 二人はご丁寧に頭まで下げる。 

 榊原イクエに似たキレイなねねさんは、ベロッと巾広で長い舌を出し、身をくねらす。 さすが鷹丸だけは苦笑い。 そして全員が、この世から居なくなった私を寿ぐように、明るく笑っている。

その絵をみて座の全員が大笑い。 特に画面を指さしたあっこの引き笑いが際立つ。 画面は続いて、長女冬子のナレーションが入る。
 
「これからおじいちゃんを偲んで、生きていた頃の懐かしかった いろいろなトークをしまーす」

 期待で胸を膨らます。まず春奈が、夕べおじいちゃんの夢を見たという。

「うそか本当か分らんけどー おじいちゃん 迷い子になってたよォ」
「それボケたんとちゃうか?」 冬子。
「うーん だけどォ 一杯飲んで ふらついてたみたい」
「それ じじさま お金ないんで、店放り出されたんとちゃうかー」

ひどい事を云うものだ。 相変わらず冬子は、幼いころからスリ込まれた大阪弁が抜けていない。 竜くんが、

「オレ去年おじいちゃんにアタマ叩かれた」 
はるなが、すかさず 
「スネてばっかおるからや、あたしなんか叱られたこと一回もないわ」
と自慢げだ。 鷹丸が、
「では おじいちゃん どうか六道の辻で迷わず成仏してください」
と殊勝なことを云う。 ねねさんは・・してください・・のところだけを唱和して頭を下げた。 こちらは迷うもなにも、いま舞い戻ってきたばかりだ。

それからはひとしきり、現在の暮らし振りや子供たちの学校生活、休みに十和田湖周辺への家族旅行の、紹介ばかりやっている。 最後に再び皆が揃って、

「ではみなさん ごきげんよう 又会いましょう、チャンチャン・・」

アホの一つ覚えのVサインと、竜くんの白眼むきで終った。 
俺に気を持たせた冒頭の「おじいちゃんを偲んで云々」あれははどうなった?

 観ていた連中はニガ笑いしながら、あの家族相変わらずやね とか、親の躾大切やね・・などと云いながら愉快な会話が続いている。 
善二郎が、
「お父さん よう自分で『おれは昔から、内気で口ベタで純情や』あればっかり云うとったけど、あの世でどうなんかな?」

笑い乍らいう。 すかさず女房ドノが、
「お父さん それ よう云うとったけど、弟の吉兵衛さんに『早う そうなりたいんやろ』と冷やかされてたわ・・今ごろ向うでも文句ばっかり云うて、周りの人たちに嫌がられてんのとちがう?!」

周りを見回して同調を促す。 皆が そうそうと相づちを打つ。 
本人が居なくなったら何故、みんなそう悪口ばかり云うんだろ。 たまには俺を懐かしんでくれるような言葉が出ないのか。
それから源三郎に対し、周りがなぜ結婚せェへんのやと、いっとき攻め立てる。 当人はニヤつきながら、逆玉を世話してくれたら と虫のよいことを訴えている。

渡し賃の算段はつかないが、この連中の話を聞いていると、アホくさくて胸クソが悪いだけだ。 

三途の川へ行こう、行けば何とかなるだろう、と再び冥道に引き返した。




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よねぞうの死9〔第二章〕・四十九日(幽冥界.黄泉)2

四十九日(幽冥界.黄泉)2


法事を終えたあと私は、案の定 冥府魔道の旅についた。

 最初から極楽のうてななどに選ばれるとは思ってはいなかったが?! うそー!。

幽冥の入口である三途(三途とは三悪道、すなわち地獄道・・猛火に焼かれる火道、 畜生道・・互いに相食む血途、 飢餓道・・刀剣杖などで脅迫される刀道、亡者の行くべき三つの途)である。
これからは、生前一度も体験したことのない世界に入っていくのだ。 

体が硬直し、立っているのも苦労するほど息苦しい緊張が続く。外ズラと反対に気が弱くて小さいからか。 いよいよこれから三途の川を渡り、彼岸へ行くのか。

気が付いたとき、ぼーと幽かに見える、陰々滅々とした途を歩いていた。 昼なのか夜なのか定かでない。 

周りを見回すと、私のような姿の人々が音を立てずに、同じ方向に歩いている。 静かで物音一つ聞こえない、生気のない枯れ果てた連中ばかり。 中には男女が手をつないでいるのが居る。 あれは心中したか、何かの事故で同時死したか? それでもよく耳を澄ますと、あちこちで囁き声が聞こえる。力のない声だからひそひそした話し声になるのか? 
 私を追い抜いて行くのもいる。 なにも慌てなくてもよいのに、と思ったとき、後ろの方で初めて明るい声高な話声が聞こえた。 聞き耳をたてると、どうやら三途の川の渡し賃のことらしい。
仲間らしい数人の男連中、中の一人が訳知り顔で話している。

「川の上流にダムができて、水量は減っていないが、瀬は昔と違ってゆったりしているらしい。 渡し賃のほか所々中州があってそこに鬼がいて、昔のように着物を剥いだりしないけど、通行税取ってそれがめっぽう高いらしいよ」

なぜ?と聞くのがいる。

「彼岸のゼニとの交換率が変ってそうなったらしい・・・」
「交換率?あの世の通貨との交換レートが変ったのか?」
「そうそう めっぽう円安.あの世高らしいよ。 そこでゼニ足らんかったら、岸辺でアルバイトして、稼いでから渡るシステムもできてるらしいわ」

何ちゅう世の中だ というボヤキ声でハタと気がついた。 

 むっ 通貨だと?俺としたことが! それ 死ぬ前のおれの本業ではないか。

本来なら当然、あの世通貨の先物予約をしておくべきなのが、まさかこんなに予期しない突然死のために。
生前、考えられる限りの先々まで気を回し、死後の墓の名義まで息子にするほど、用意周到と自慢していた。 ただ女房ドノは、いつもその慌てものぶりを笑っていたが。

このまま川を渡れないとなると、六道の辻で迷うどころか、幽冥界を永遠にさまよい続けなければならない。 今さらアルバイトする体力気力もないし。 

葬式で女房ドノが 
「昔から、6文銭だけで渡してくれる云うてたから、これでエエわ」

と棺の中に穴あき銭数枚を放り込んだだけだ。 こんなはしたガネでは渡れないのは明らかだ。 それでも坊さんにお布施をはずんで、ありがたーいお経でも、ねんごろに上げてくれておれば、特別に成仏(得仏道)できたかも・・トホホ・・。

しばらく思案していたが、足が自然と来た道を引き返しはじめた。


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よねぞうの死8〔第二章〕・四十九日(幽冥界.黄泉)

四十九日(幽冥界.黄泉)

よねぞうが死んで49日が経った。

 四十九日とは、中蔭の間の日数が満ちる日であり、今生の死と未来生との中間で、来るべき報いを未だ感じない間だ。 そして三界六道の生ずる日だ。 その前に極善.極悪でない人が、死んで中有の旅路を越えるという川、これを三途(さんず)の川という。 よねぞうの拙い知識では、川中に三つの瀬があり緩急を異にし、生前の業の如何によって渡る所を異にする。 川のほとりに翁と姥の二鬼が居り、亡者の衣を奪うという。 今日はその四十九日で朝から坊さんが来、親類縁者が集まった。

生前 徳を積んである人ほど、参集する人数が多いはずだ。 期待が高まるではないか。 

ところが肝心の長男鷹丸一家は「遠いミチノクであり、子供たちの新学期が始まり、また勤務の都合等も含め・・」と講釈を並べ立て、あげく「ビデオレターで参詣する」とて、リンゴ一箱といっしょにテープを送って来た。 
夫婦どちらが言い出したか分らないが、しょせんカネがかかるからだろう。

まァ大人数で諸事多難の折り、やむを得ないか! 
宗旨は真言宗だから家の近くの同宗の末寺から、歳の経た坊さんが来てアッと思う間もなく読経が終り、お布施を懐に先程帰って行ったところである。



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よねぞうの死7・夕景・・・ 4

夕景・・・ 4


生前に、墓所や石碑を準備しておくのを寿陵(じゅりょう)というらしい。

寿陵は生きているうちに一度死んで、これまでの人生に区切りをつけ、新たに今後の人生を過ごす疑死再生を意味するんだって。

また仏教では、寿陵を造ったり、生前に戒名を授かったりすることを、逆修というらしい。 逆とは「あらかじめ」とも読み、その功徳は図り知れず、死後に行うのに比べ、7倍の効果があるそうな。(墓石業者)・・

どうせ坊主と墓石屋のひねり出したコマーシャルトークだと思うが・・その誘いに乗って生前苦労して場所は確保した。

それに、死んだら名儀変更手続きなどうるさいと思い、先走って初めからアイツの名前にしといたが。
高い金出して、折角東向きのエエ区画手に入れたのに、あの墓に入れて貰えないかも・・・だんだん不安が増してきた。 こりゃア死んどれん。
 つづきは なかなか成仏できない幽冥から   乞う御期待。

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よねぞうの死6・夕景・・・ 3

夕景・・・ 3


あほらしく騒々しいので、女房一族の部屋に聞き耳を立てる。 こちらは鷹丸夫婦や、長女夫婦も混じって賑やかだ。

義弟の吉兵衛君が、このあと墓はどうすんの あるの?と問うている。
「親父がむかし北摂霊園に墓買うて、最初からボクの名義にしてあるから心配ないね

皆が 手回し段取りのエエことや と感心している。

「丁度茨木高原ゴルフ場と背中合わせで、夏涼しいけど冬は山路凍結の怖れあるんで、あんまりお詣りでけへんかも」

今から凍寒を引き合いに出して、墓参りのサボリを云っているこの親不孝のバチ当りが・・腹が立ってきた。 長女の晶子が朗らかな唄うような声で

「お父さん酒好きやから、1年ぶんの酒やビール、前の土の中に埋めといたったら年1回でエエやん! あんまりお詣りすると、また何云われるか分らんでー キツイ坂で事故でも起こしたらエラ損や」
  
みながドッと笑う。 こいつも何というバチ当たりめが。 昨日は眼を泣き腫していたのに、と顔をよく見ると なんだ この子はいつもこんな眼をしていたか、と改めて気がつき、昨日悦んだのが損した気になる。


そこで ハタと気が付いた。 大変だ。 昔聞いた嫁のねねさんの言葉だ。  数年前、なんのことか忘れたが、イヤミごとを云ったとき、
「お父さん そんなこと云うてたら 死んだらお墓に入れたりませんよ あれは鷹丸さんの名儀ですからね!」

一瞬絶句したことを、今鮮やかに思い出した。 

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よねぞうの死5・夕景・・・ 2

夕景・・・ 2

大人たちの仲間入りできない孫6人が、賑やかに入って来た。 嫌な予感!

もうだれも怖がらなくなっている。 みなが交互に私の顔を眺めて、吉宗まで小さな指で頬を突ついたり、ひたいを叩いたりいじくる。
春奈は、数年前から自分の創作したはるなランドの実況中継をはじめる。

「はるなミュージアムランドからの中継でーーーす・・」 
口から先に生れたような春奈は、なめらかな声に抑揚をつけて喋りだした。

「こちら 久しぶりに地獄めぐりの入口からの中継でーす・・・」
「この入口は私たち この世の者は入れません それでこれから入場される亡者の方々に、感想などインタビユーして皆様がたにお届けします。 ああ 今ちょうどよいところに おじいちゃんがやって参りました。『おじいちゃん これから地獄へ行かれるご感想をひと言』・・」

寝ている私の顔にいつ用意したのか、トイレットペーパーの芯を突きつけた。 

これから何処へいくかまだ決ってないのに、いきなり地獄か。

「はいはい えっ 春奈は頭がよくて賢くて キレイですって ホッホッ 今さらオベンチャラ言ってもおそいですよ それよりご感想を・・何もないですって? 生きてるとき悪さしたり、云ったりした人は 針千本飲まされたり舌抜かれたりするらしいですよ、おじいちゃんは? えー 二枚舌やから一枚抜かれても平気、へー じゃァ赤鬼と青鬼どちらがこわいですか? えッ いつも飲み屋で会っていたからコワくない ふーん エンマさんわ? まだ会ったことないって でかくてコワイ顔して、いばっているの知らないですか? なにこわい顔ならおばあちゃんの寝顔が一番? ふーん・・・」

名インタビアーに周りがヤンヤと囃し立てる。 そのうるさいこと。 とうとう冬子を先頭にインデアン踊りを始めた。

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よねぞうの死4・夕景・・・

夕景・・・

私の一族と女房ドノ実家連中が、各部屋に分れて一杯やりながら喋っていた。

 昨晩のしめっぽい雰囲気と打ってかわり、笑い声が絶えない。 
私の縁者連中の集まっている部屋の中では、私の妹トメ子が、際立って派手な声を上げている。 一晩でこうも変るのか?

「憎まれっ子世にはばかる云うから、もうちょっと長生きする思たけどなー ところで ヒミコ姉ちゃん(女房ドノ)、 こんなこと云うたらなんやけど、兄ちゃん だいぶヘンコでやりにくかったやろ・・」

「・・・・」 

返事が小さく聞き取りにくい。 私の姉の絹子が、和歌山弁で、
「今さら死んだ子ォのことを そんな云いかた したったらあかナ 案外神経のコマいとこあって 優しいとこもあったでェ、まあヘンコは小さい時からやし ちょっとコージク(頑固頑迷)なとこあったけどなァ」

兄嫁の照子姉が、
「よねぞうさん エエ子やったわわァ わたしらのこといつも心配して、時々電話くれて。 お父ちゃん(夫)に怒られてから あんまり家に寄ってくれへんかったけど」

「おれ なに怒った? おれ覚えてないで−」と兄。 
「いつか電話で話しとったとき『いつも俺に説教めいたこと云う もう家へ来るな』云うたやろ あれからたまに家に来ても 10分かそこらで帰ったわあ」
兄は「覚えてない、そんなこと云わん」と云い、絹子姉が先程と打って変り
「まア 何にせよ頭の担いギリはな ああ云うたらこう云う 昔からそんな男やった、そらヒミコさんも永年苦労したやろ、ごくろうさんほっとしたやろ」
座の全員が明るく笑っている。  くそッ。


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よねぞうの死3・通夜二日目

通夜二日目


前日の通夜の疲れからか、座敷に陽が射してきても大人たちの声がしない。

それに比べて子供たちは早くから騒々しい。 長男.次男に各女二人男一人の孫6人が、久しぶりに揃ったものだから喧しいことこの上ない。 暫く居間や食堂で騒いでいたが、最初まず仏間にやってきたのは鷹丸の子供3人である。

そっと棺の窓を開き、珍しそうに各々中腰になって左右から覗き込んでいる。


「目つむってるけど ほんとに死んでるのかなァ」

末子で長男の竜馬(小1)が、しわがれ声で声をひそめる。 小3の春奈が

「あたりまえじゃん 死んでなかったらおじいちゃん こんなせまいところで長いこと ようシンボウせえへんわ 目開いて『うるさいッ』 云うわ」

「だったら つっついてやろ」

長女の冬子(小6)が やめとき と押える間もなく、チョンチョンと人さし指で私の頬を突っついた。 わあっと大声を出す姉2人。 冬子が、

「やめとき 云うたやろ 起き上がったらどうする?」

「ノブ どんな感じ 冷たかった?」 

春奈が竜馬の うんと云う返事を聞くや、同じようにつついて、わっと自分で声を上げて逃げ出した。 二人も声を出してその後を続く。


代ってやって来たのが、善二郎の子供たち3人。 長女の夏子(小1)を先頭に一様にそっとつま先立って忍び足である。 開いたままの窓から、怖がりもせず揃って覗き込む。 吉宗(3才)は二人の姉の脇に首を突っ込んで見ている。

「さわったらあかんで 起きるからな!」

夏子が、わけ知り顔でささやくように云う。 秋子(6才)が姉の顔を見て

「おじいちゃん ひとりで さみしーないんかな」 優しいこと云うやないか。

「死んでるから 分らんのと ちゃうかぁ」

3人がじっと眺める。 吉宗が姉たちの脇から突き出した首のまま、突然

「こらっ めェ さませッ こらっ」

大声で叫んだ。 聞いたとたん、姉たちは一目散に逃げ出し、吉くんも驚いて小さな尻をふって後を追った。

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よねぞうの死2・通夜一日目

通夜一日目

最初 女房ドノは呆然自失の体であったが、半日も経つと、夫の死が実感として身にしみ込んできたのか、最初の晩はいっとき涙を流した。 おお、うれしかった。

子供達は 孫たちは どんな反応?・・期待に胸がふくらんで待っていた。

最初 娘夫婦がやって来た。 娘は泣き腫らした腫れぼったい目で、棺ののぞき窓から私の顔に涙を散らした。 大変 うれしかった。

次男の善二郎一家5人が来て、同じ様に窓から覗き、善二郎が「おとうさんッ!」と涙声で顔をゆがめた。 そうかそうか、 うれしかった。
 
それから次々に女房ドノの実家、私の一族が続々詰め掛けた。 みな緊張した顔つきと動作で、私の顔を覗いては一言二言話しかけたり、黙ったまま数珠を片手に拝んでくれたり、神妙な顔つきで入れ代わっていく。

その夜遅く、長男の鷹丸一家5人が到着したようだ。 
一刻ざわめいていたが暫くして夫婦が顔を覗かせた。 鷹丸は目を閉じ、なにも云わずじっと俯いている。 長いこと長いこと。 声をかけたいほど うれしかった。

源三郎は昨夜、皆が疲れて寝静まった後も、夜明けまで独り通夜をしてくれた。 連れて行きたくなるほど うれしかった。


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よねぞうの死1・ピンコロ

 これは この世とあの世を行き来する時空の物語である。

   ピンコロ
 あのよねぞうが死んだ。
 いわゆる高年齢者が理想とするピンコロリ(ピンピン生きていてコロッと死ぬ)だ。

突然のことで本人も死んだことが、未だ分らないのではないだろうか? 
日ごろ風貌も若く見え精力的で「俺はトウねん取って40才台だ」と威張っていたが。 そのようなあっけない死にかたで、この世から消えた。

 現在生きている者から考えて、それは理想的な死にかたで目出たい。
と文章に書けばわずか数行で終るのだが・・・周りの関係者みんなもそう思っているはずだ。 しかし彼を知る者のなかには、
「本来なら彼は苦しんで苦しんで、ノタ打ち回って死んで当然、それがいとも簡単にサヨナラされると不公平ではないか、この世に神も仏もいないのか」
そう思う人も居るだろう。

ところが、幽冥境いとはそう簡単ではない。

特に、よねぞうのような日ごろ、愛著(あいじゃく)驕漫(きょうまん)煩悩(ぼんのう)嫉妬.怒り.軽薄.その他.人間の持つ諸悪を人一倍濃く持ち且つ、その因業を積み上げてきた者は簡単ではない。 
まず彼の死の直前から話そう。

夕食に酒一本缶ビール1本を、うこんをサカナに約2時間かけ飲み乍ら、側の女房ドノを横にテレビを見て、気にいらないと口を極めてののしり、いつもの様に世の警世家ぶって、ひんしゅくをかって寝たのが9時前だ。

その晩は冷たい氷雨上がりで、冷え込みのきつい深夜。 薄い二枚重ねのふとんに身を縮めていたが、ふと目を覚し半覚睡の状態で、いつものように下腹の尿意を確認した。 寝床から起きようか、もう少し我慢するかの葛藤でぐずぐずあがいていた。 頭からのにぶーい命令で、やっと手洗いに行くため起き上がった。
立上がったとき、胸に少し締め付けるような痛みが走り、心臓のあたりを手でさすり乍ら便所に立った。 薄い寝巻きを透して、刺すような冷気が足許から這い上るのを辛抱して放尿する。 歳をとるとなかなか最初のひと走りが出ない、といつも思いながら少しイキむ。 やっと終って寝床に戻った。

並んで隣に寝ている女房ドノの、いつも聞くオソロシイ高イビキが、今は止ってまるで死んでいるようだ。 が、かさ高に見えるから大丈夫だろうと苦笑し寝床にもぐり込み、暫くして眠りに入ろうとしたとき、再び胸に痛みが来た。
先程よりも強い。 波状的に猛烈な痛みが続く。 隣の女房ドノに合図どころか、胸を抱えてエビのように横になり、あっともうっとも言えず、そのまま息ができなくなって気を失った。 そして何分か後、硬直した全身が弛緩をはじめ、潮の引くようにしてよねぞうは死んだ。 
享年59才。


 40才台後半から血圧が高く、彼の母親も脳硬塞のあと、寝たきりの中風で死んだから、自分も死ぬなら循環器系、脳にまつわる病気で、周りにシブとく迷惑のかける死に方だと思っていたのが、あっけなく心臓マヒで死んだ。
 

夫が死んでいるのを、女房ドノが知ったのは朝になってからである。
目覚ましが鳴っても、それから約10分ぐずぐずし、7時前にやっと起き出すのが日課。 夫はいつもそれより2時間半まえに起きて、居間のテレビを付け新聞を読んでいるはずだ、と思って何も気にせず寝間を出た。
朝食をつくり終えて、やっと居間に灯がついていないのに気づき、次いで寝間を見た。 珍しく向うむきになって、まだ寝ている夫に向って声を掛ける。返事がない。 もう少しそのままにしておこうと引き戸を閉めた。
そのとき30才を超えて、まだ独身で居ついている三男の源三郎が二階から降りて来、「今日の新聞は?」と母親に聞く。
「今朝は珍しくお父さん まだ寝てるねン」
ふーんと言って外へ新聞を取りにいった。 新聞を持って玄関に入ったとき、母親が大声で、「お父さんッ・・」 を連発する異常な叫び声が聞こえたので大急ぎで寝間に駆け込んだ。
女房ドノと息子が、ようやくよねぞうの死を確かめたあと、手分けして縁者.親類一統に連絡し大騒ぎになっていった。


それから・・・
あっけなく死んだ本人自身、何がどうなっているのか分らぬままに、棺桶に入れられるハメになったのである。
当の本人、死んだという認識はあるが、いま一つしっかりした自覚がないまま、ふわふわと空中をただよっているような気持ちで落着かない。 五体は棺桶の中だ。
生前、新聞やテレビで悲惨な事故.事件などで、最愛の人を失った肉親や身内関係者を、ニュースキャスターなどがお涙頂戴の場面に仕立て、思い入れヨロシク、必ずといってよいほど「天国でやすらかに・・」と云うのを、
「戦後いつから日本国が耶蘇教(ヤソ教)に宗旨変えしたんじゃ、仏教には天国ってあるかいな、極楽.地獄じゃ、バ−カ」
 そう云っていつも毒づいていたが、さて、これからオレはどこへ行くのか?

こちら 此岸(しがん)では突然のこととて右往左往。
まアしかし世の中よくしたもので、葬儀屋に頼めばカユイどころか、カユクないところまで手の届く時代。 その日のうちに医者の死亡診断書(大変興味があったので病名を覗くと『心不全.不整脈源性右室心筋症』といかめしい)も揃い、つつがなく最初の通夜を迎えた。 
長男一家がミチノク青森という、大阪から見て辺境のさい果て 蝦夷地にいる為、一日かかって到着するのを待ち、本葬を翌々日とした。 つまり通夜を二晩されることになったのである。
その為、真冬にも拘わらず棺にドライアイスを敷き詰め、ご丁寧にその上にアイスノンを敷いて寝かされている。長男一家のお陰で残酷極まりない扱いだ。

つづく

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はじめまして

高野應其です。

いよいよ、連載スタートいたします。

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