應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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釣アラカルト2

 川から海への転向

 38歳まで川釣り専門であった。冬はハスやニゴイ、初夏から晩秋にかけてアユ釣りが専門で、主に素掛(段引き)だった。うなぎ.なまず.ねほう他
 住まいが和歌山から大阪、しかも北摂の豊中へ移ってからも10年余り紀ノ川へよく通った。 遠い川へ何故、と思われるが、
当時、戦後の日本が経済の復旧から勃興期に入っていたが、反対に陰の部分である公害が全国いたる処に発生した。しかしまだ国民の意識も今ほどでなく、公害よりも景気の上昇を望んだ。
日曜日、テレビの連続お笑い番組でテ-マソングの合間に、こんな台詞が入るのが人気を博していた。

「スモッグ.スモッグ言うけどなア、これが大阪のエエとこだァ」

まだ此花区の7本煙突から吐き出す煙が、大阪の景況を占うバロメーターであった時代、田舎の都市から出てきた者からみて京阪神の河川はまるでドブ川のような気がした。従って周辺の川は敬遠した。
それと紀ノ川はクセまで知り抜いた通い慣れた川であることと、マス科の鮭ではないが、潜在的に生まれ故郷が恋しかったか。

ところが或日突然、座骨神経痛らしき痛みが起こった。
鮎釣りは早朝から夕暮れまで下半身裸のまま流れの冷たさに曝されていたし、特に秋の落ちアユシ-ズンは晴れた日でも胴から上はカンカン照りだが、下はそぞろ身に染む冷たさに耐えなければならなかった。最近のように、真冬の水の中でも自在に戯れることのできるウエットス-ツが普及しておれば、今も川釣りをしていただろう。 
「こんな若さで、神経痛に一生つき合わされ兼ねないのはご免だ」と、ぷっつりやめた。

暫くして勤めの場所が神戸となり、得意先で釣り談義をする機会が多くなった。
さすが神戸は海の街、釣り好きが大勢いた。その中でも釣り歴30余年のベテラン理髪店主の東さん、話上手でたちまち血が騒ぎだした。

曰く、「海ほど意外性のあるものはない 川は昔おばあさんが洗濯に行って桃太郎さんを手に入れた程度 海は違いまっせェ 時には変った外道も上がるし・・」と。

或る秋の休日、東さんの友達と3人で、明石の対岸、淡路島の岩屋(いま明石大橋の架かっている)の波止へ行った。今日はかれい狙いだとのこと。
 過去に海の経験は、主に波止から竹ざおで小アジをウキ釣りした程度、取りあえず道具仕掛けは東さんから借りた。川では見られないガイド付きカ-ボンロッド竿・スピニングリ-ル、当時はまだ高価であった。

 現場に着いて仕掛けを教わり、取りあえず第一投したが、うまく飛ばない。
周りが親切に教えてくれるがどうも勝手が悪い。20mも飛ばない、左右にブレたり足元に落ちたり。暫く見ていた2人、うんざりしてきたのか

「まァ落ち着いてやりなはれ、そのうち、うまくなりますよ」
と慰めとも憐憫ともつかぬ言葉を残して離れて行った。

それでもなんとなく要領が判ってきたので力を入れて投げた。
が、10m程の水面に落ちただけだ。
途端、リ-ル止めのネジが弛んでいたのか、リ-ルが足元のコンクリ-トに落ちて音をたてた。わッと思うまもなく転がって海へトポーン。
頭の中が白くなり、竿を置くや大切なリ-ルを引き上げねばと大急ぎで釣り糸を手繰り寄せた。約200mも巻いている糸はいくら手繰っても果てしない。

どこかで見ていたのか離れていた2人がとんで来た。ようやく手に重みが掛かり海底のリ-ルに行き着いたようだ。東さんとその友達は、横から慎重に、慎重にと声をかける。
どうやら海底で障害にも合わず、やっとリ-ルが顔を見せた。3人は顔を見合わせて、それぞれの思いで暫く笑った。こちらは借り物の道具が揚がってきて、やれやれ安心と虚脱状態である。

投げた仕掛けを手で引き上げにかかった。変に重くてヒクヒクと強い引き、
むッ?、そばから東さんが、

「たぶん根掛かりやろ、切ってもエエから引き上げていいよ」と声をかけて呉れるので思い切って引っ張った。が、どうやら魚が掛っているらしい。

「なにか付いているらしい」と言うと2人は「どうせガッチョぐらいやろ早よあげて」と言う。
猛烈な引き、糸で掌が切れそう、が今のアクシデントで逆に気が昂ったのか、強引に引き上げた。しばらくして水面で腹を返したのはなんとそれは真鯛、周囲の連中がわっと声をあげる。東さんが、うまくタモですくいあげて呉れたのは40cm余の正真正銘の明石ダイであった。

私は2人に向かって「すんません、すんません」と片手で後頭部を撫で乍ら、意味もなく頻りに謝っていた。 暫く経って思い出した、なるほど、これがほんとの海の桃太郎か!と。                      
  
 
             ごあいさつ

高野おうごのブログ、一応今回の『釣りアラカルト』をもちまして、終了させて頂きます。
冗漫で拙い文章に、長い間おつき合い頂き、ありがとうございました。 衷心よりお礼申しあげると共に、皆様方のますますのご多幸を祈念いたします。
ありがとうございました。
                            08.彼岸.






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釣アラカルト

  会社人間、つりに行く

 当節,近郊の海辺は釣り人で大賑わいである。足場のよい堤防や波止、つり公園等は、いつ行っても人っで溢れ返っている。最近の特長はファミリー組が多く特に休日はうば車までみかける。アウトドア.スポ-ツ全盛期の様相である。特に最近は漁や趣味だけでなく、スポ-ツライフ.癒しの感覚等で若い女性が結構多い。

 昔と言っても30年程前のことだが、釣場は静かであった。とくに、彼岸やお盆などは殺生をすると水難のバチが当たると言い伝えられ、御先祖さまのお祭りにこころ配りをしたものだ。
が近年は仏ホットケと元気なおじいさんや、おばあさんまで物見遊山気分で一緒にやってくるし、お盆などは、却って空いているのではないかと深読みして繰りだして来る始末。
 漁師もホトケそっちのけで、おまつりを家族にまかせて、稼ぎ時とばかり遊魚船をだす。 釣りの大衆化、誠に結構な御時世ではある。
 さて巷間、「釣の好きな人は気が長い」なんてよく言われるが、それは違う。私に言わせれば、釣りの好き嫌いの色分けは、好きな人、誘われれば行く気になるが、あまり積極的でない人、そして嫌いな人等、3種類に分かれるようだ。 私は、これは多分、幼児体験の成せる結果だと思って居る。 

 小さい頃、オヤジか誰かに釣りに連れていって貰って、大漁の経験やオモシロかった印象が強い者ほど、度合いの差に現れるようである。
 ところで、今の釣場風景があまりにも変わってしまったので、今昔について一言。
以前の釣り人は川や海と一体となって(同化するごとく)静かに釣ったものである。
マナーや規律は誰に教わる訳でもなく自然に会得したものだ。 マナーと云っても弁当がら針糸やゴミは持って帰るなんて、きょうび4~5才の幼稚園児でも知っているような事ではない。
例えば、釣っている人の近くで釣るときは必ず挨拶をし了解をとったり、側を通るときでも、軽く挨拶する程度で余計なことは話しかけない等、単純で極めて基本的なものだ。 
その頃の釣人は、総じて風体を一目見ただけでヴェテランと判ったもので、地味な服装と、何故か年中色の褪せた麦藁帽子を被り、僅かな道具仕立て等、....そして一様に寡黙だった。
 ところが最近の釣人スタイルは、熱帯魚が動き回っているようにカラフルで、釣の道具類も高級品の見本市のようだ。 釣られる魚のほうも、最近は有名ブランド好みになったか?。
また騒々しさも言語に絶する。風の強い日など大声でドナリあい、まるで終盤の選挙演説のよう。 
誤解されては困るが、そんな昨今について私は決して、「釣とはかくあるべし」式に御託宣をならべて、道を説く気は毛頭ない。が、・・・・
それよりも最近、釣り場で極めつけの風景と体験をさせられたので、その話。

 昨年秋 9月中旬早朝 微風 海穏やか 薄曇り 満潮午前8時40分の予定
 チヌ狙い 餌コガネ。 釣り場に着きポイントを決めて6時半頃、早速手のひらより一回り大きなを一匹挙げた。今日は朝から調子がエエわいと・・
 偉そうに云う訳ではないが、釣りは 1にポイント 2に潮 3に餌 4に辛棒 それらに増して、とりわけ大切なのは 念 の集中だと。これは今までの私の経験からしてつくづく思う。
 
釣は集中力を欠き雑念が入ると、今まで釣れ盛っていたのが途端に止まってしまう。不思議なもので、この現象は実体験のある人ほど分ってもらえるはずだ。
 さて 二匹目をねらって気を充実させようとしたとき、
突然、騒々しい一団が現れた。 そして一目みて驚いた。 6~7人が、1人を除いて赤・黄・青・まるで信号機だ。 しかもコピー人間のように、帽子から着ている上下 靴 手持ちの道具に至るまで。おなじ色柄スタイルの集団である。 なんじゃこりゃ?
 その目立つこと、一瞬、釣具メーカーの宣伝部隊かと錯覚した。だがよく見るとどうやらピカピカの釣り一年生登場のようだ。

 当日は平日で朝は早く、余り人も出ていない。私の10m程離れた防波堤に地元の老人が一人いるだけである。この波止は長さ数百mもある。

 あっけにとられていると 何の因果かこの集団が、選りにも選って私の右隣へ来て場を取った。他に幾らでも釣場所があるというのに。歳の頃は皆60歳過ぎだ。
 この連中、車座に座るやいなや朝の9時すぎというのに、早速クーラーから酒や缶ビールを取りだし宴会を始めた。

「じゃあ、本日の大漁を祈念して・・カンパーイ!」と。

 うるさくて仕様がないが、多少興味もあって聞き耳を立てていると、会話の中に頻りに部長・課長・係長・00くん・が飛び交っている。
 ははぁ これは同じ会社をリタイアした年金者集団で、以前の部署がそのまま海辺へやってきたのか。要するに今日はこの連中のヴェテランズデーか。
 中でも00部長と呼ばれているのは、尊大な言葉付きが耳についたので、顔を見ると、キャリア官僚から成り上がった政治家などによく見かける、これ以上左右に曲がれない程の威張り口をしている。
これを頭に、どうやら課長が2人、係長2人、ヒラが2人の色分けのようで、課長のうちの1人が頻りに、
「今日は部長の発案のお陰で我々の楽しい趣味の会ができた」
と、元上司を持ち上げている。
 暫くしてそのオモネリ課長が、「00くん、そろそろやるか」と声をかけた。すると、ハイハイと立ち上がったのはこれも60過ぎの、その場の連中と服装の違う地味なベテラン風の男、早速仕掛けを作り始めた。
 他の者は相変わらずガヤガヤ云いながら酒を呑んでいる。ようやく皆の仕掛けが出来上がった頃は、前祝い連中の酔いも相当出来上がっていた。

 仕掛けをみると初心者のよくやるサビキ仕掛け、アジや小サバ狙いのよう。ありゃア、と思う間もなく一斉に私の右隣で一列に並んで、ドボンドボンと仕掛けを投げ派手な音を発てだした。

 これは大変だ、と内心困惑していたがそれでも連中、暫くは大人しくシャクリを繰り返していた。 が、さっぱり果がらない。

そのうち一人が おかしいなあ、といいだした。
今日は魚の日曜日じゃあねえかとか、エサがよくない いや仕掛けだ 針だ がやがやとしゃべり散らす。中には潮がよくねェ なんて、いっ丁前の口をきくのも居る。小節をきかせて歌を唄いだすのも・・・すぐ飽きの来る連中だ。

 こちらも何時までも気にしている訳にはいかないが、気が散って釣にならない。それでも奴さん達、約半時間ほど粘っていたが、とうとう諦めたのかぞろぞろ何処かへ行ってしまった。隣の老人もニガ笑いしている。

やれやれ助かったわい これから本腰を入れて・・と改めて海に向き直った。しかし一旦緊張が解けるとなかなか元に戻らない。ウキはびくとも動かない。釣れないから思考がどうしても先ほどの連中に流れてしまう。
 
おかしな連中だなぁ 色までお揃いの押し着せ集団とは・・・たぶん家で居ずらくなった連中が、釣の世界へやってきたんだろう! しかし同じ元職場の組織まで持ち込むことは無かろうが。
永年の勤務習慣とは恐ろしいもので死ぬまで続くんだろうか。


話は外れるが自己反省を込めて考えてみるに、一般的なサラリーマンは現役のとき一所懸命働き、自分ではヤリ手で・・と思っているが何んの事はない、案外会社に遊んで貰っていただけの習慣人間、せいぜい接待ゴルフでお世辞か自慢話が関の山。この手合いがリタイアするとこれからはもう一人では遊べない。時間だけはたっぷりあるがなんの趣味もない、ウロウロ右往左往だけ、そして兎角群れたがる。その結果、今のような集団が出来上がったのだろう。 
と、どんどん空想が広がっていく。
特に例の部長を想像するに、・・
 辞めて自分の女房以外、なんの権力も無くなったがなーんにも出来ない。数カ月は家ん中でゴロゴロ。
亭主に、貞女の鑑と思わせている女房殿も当座は、
「永い間お勤めご苦労様でした、ゆっくり骨休みして下さい。」と、殊勝なことを云っていたが、そのうち毎日毎日二人だけの変化のない日が続く。
 巷間リタイアした男達が妻に「ワシも行くワシも行く」と何処へでも付いて行くワシ族とか、引っ付いて離れない濡れ落ち葉族と、揶揄されるのを絵に書いた様なこの亭主、辞めてからはトイレ以外、四六時中付き纏われては女房も邪魔で気ぶせいで、終いには疎ましくさえなってくる。 

 現役の頃のダンナは、どうでもよいような事をよくドナったものだ。
特に朝早くから出勤まえの玄関先でバリ雑言を浴びせる。そんな時でもハイハイと従順にかしづいて、模範的な主婦を演出してきた。 
腹の中では、(なあに敵さん、いくらドナっていても、バスの時間が来れば素ッ飛んで行くんだから)と、秒刻みで足元を見ているからだ。 
(下手に逆らって、こちらも一日中嫌な気持ちで居たくないわ)
 出て行った後は、再び寝ようと起きていようと、また隣の人達と、時間無制限でしゃべり散らしていようと気ままなついこの間までの毎日、気晴らしのネタぐらい幾らでもあった時代。
(ああ あの自由一杯の、至福の時代は何処へ行ったのか・・・それに引き換え今はうっとうしいこと、この上ない)。 
そこで深謀遠慮を働かせた。
 この旦ツク、無理に奨めて趣味を持たせても、根気が続かなければなんにもならない。要は家ん中に居なければイイのだ、同じ境遇の連中を集めてアソばせるに限る。或るときテレビを見ていたら「優しく、楽しい、趣味と実益のつり」とのタイトル。これだッ、と直感。最初に ”やさしく” ときた、これがいい。 早速釣りでもしたらどうか、と奨める。
「うん、だけど俺やったこと無いもんなぁ」と気の無い返事。
「数年まえ辞めた00さん、時々釣ってきたと云って、アジやメバル、時にはハマチなんか持ってきてくれたでしょ、00課長さんや00係長さん達も誘って、00さんに教えてもらえば・・釣果があれば新しい魚も食べられるし。」 と誘導。
「おお そうか、うん、趣味と実益か、それがいい」
 と乗ってくる。早速この亭主、00課長に連絡している。思わず女房、腹の中で快哉を叫ぶ。うまく行った。小沢昭一的こころではないが「しらバカァ、アホぞうらァ・・・」と、北国の春を思わずハミング。

同じ境遇で、無聊を囲っていた同病課長 
「こりゃいいアイデアですなぁ」と二つ返事で旧部下の係長達に声をかける、皆が集まって衆議一決。
気の毒なのは元勤め先でヒラ社員で終わった00くん。くだらない連中のくびきから開放され、平穏気がねなく暮らしていたのが突然、部長以下に呼び出されて、
「00くん、我々は釣をしたいんだ、そこできみィ ご指南を願いたい、全てきみに任す。」
現役のとき、仕事をあまり任されたことは無かったが!
仕方なく皆を釣り具店へ案内する。 
今の釣り具店は、実に楽しい店造りを競っている。釣り具だけでなく、屋外キャンプ等のアウトドア用品がファッショナブルで、大量に満たされている。
目的の釣り具も昔と様変わりし、ハイテク見本市のようで洗練されたレイアウトに並んでいる。皆は感動したはずだ。
 
 それはさておき、00くんのアドバイスで、竿・針・糸・リール・かご・浮き等仕掛け一式、その他クーラーボックス・布製カバン・バケツ・手袋・帽子・防水用防寒具・ジャケット・ズボン・靴に至るまで手に取ってうなっている。
う-ん、こんなに必要なのか? 
ところが店員に、これらはいかに必要で優れ物か、の専用機能を講釈されるとたちまち、成る程、と感心し、少々値段の高い防寒具でも「ゴルフの新製品クラブに比べりゃ安いもんだぁ」と、小金の持っている連中、アレもコレもと手にしてレジへ。
 そのとき、さすが元総務係長の00氏、待ったをかけた。
「みんな同じ物を買えば安くなるはずだ、ねぇ部長、まとめ買いするからと、値引きするよう00くんに交渉させましょう。」 
「おおそうだ、いい考えだ、もっともだァ、」皆の同意で、その結果が・・・。
お分りでしょう、全く色柄まで同じスタイルが出来上がった、と云う次第。 

いやあ持って回ったこの推理、本当かァ!?、

ああしんどう!  


 アホウなことを想像していたが陽も上がってきて、そろそろ潮も動き始めたので真面目に海と向き合う。
暫くして、小さいアタリのあとウキが消し込んで、うまく針に乗せた。引きが強い、大きいようだ。1・5号のハリスだから無理は出来ない、慎重にやりとり、数分かかってやっと腹を見せた。 左手でタモを持とうとしたとき、突然大声をあげながらドタドタと4~5人が走ってきた。
なんだなんだ、こいつらァ?
どうやら遠くから、こちらの竿の曲がりを見て駆け付けて来たらしい。
竿とリールで前後左右と、いなしている最中に息せき切って辿り付いたあの部長、1mと離れていない水面にドボンと仕掛けを投げ込んだ。 
「取り込んでいる最中やからそばへ寄るなッ」
 こちらは悲鳴を上げるが、てんで聞くものか。やって来た連中も我れ勝ちに音を立てて投げ込む。
運の悪いときは重なるもので、そのとき小サバの大群が回遊してきて、あっというまに皆のサビキに食いつく、そしてサバの横走り。 
うりゃア!
奇声を挙げて彼等は喜び勇みたったが、たちまち此方の仕掛けとおマツリだ。 
声を出しかけた時、イバリ部長が猛烈にリールを巻きだした。やめろッ やめろッ!と叫んでも何かな聞こえるものか。
一挙に巻き揚げて竿先のガイドに絡まり、竿が折れそうになってやっと止まった、私の仕掛けも一緒に上がったまま。 

 当然、先程までやりとりしていたチヌもいのち拾い、ハリスを切ってさよならだ。 相手のサビキの疑似バリ5~6本のほとんどに、10cmほどの小さなサバがくっついている。 モーレツに腹が立ってくる。
「こっちの魚が逃げたやないか、オイ、早う自分のそのジャコを取っておマツリを解いてくれッ」。
声を荒げると、さすがに多少気が引けたのか云い返しもせず、ブ然とした顔で自分の竿先で跳ねる小魚を見つめてじっとしている。もつれた糸をどう処理していいか判らないらしい。 
そのとき横に居たオモネリ課長が云った。
「00くん、部長のを、ちゃんとして差し上げろ。」
さしあげろ、だって・・ 
60才をとおに越した00くん、口を尖らせながら小サバを取り込んだり、糸の絡みを解いたりしている間、威張り部長は海に向かって、身じろぎもせず眼を据えている。
その横顔を見ると、への字口辺のたるんだ皮がヒクヒクと動きつづけていた。
                     
        
    ふたたび、色の隠し味をどうぞ。
   
  このごろ世間に起きるもの
戦前は聖職と云われ、戦後も教育に携わって世の父兄.子供達から尊敬と信頼を受けてきた先生。
品行方正.正確無比.謹厳実直を旨とし、世の信頼を得ていた銀行員。
社会の法秩序.治安維持を護る盾として、日夜奮励している警察官。
最近、この職にある人々の醜聞が多すぎる。しかも分別盛りの年令で、特に見聞に耐えない下半身の事件等が・・・。
世間一般はこれらの職にある人たちに対し、一応は品格や知識を期待し、その代り尊敬や畏敬もする。その期待に応えるべく「私はかくあるべし」と自らを律する規範に縛られる。
まア、しかし考えれば職業とはいえ、所詮並の煩悩の持った人間に変りはない。 現今のように、見聞きするもの全て刺激的で露出挑発するような世相であれば、職業柄いつも内こうし抑圧されたぶんだけ余計、願望.欲望.妄想が強くなる。それも適当にうまく処理できる者ならよいが、日ごろ発散の術が分らない、気が弱くて小さい者ほど、突然歯止めが効かなくなってしまうのか。
むかしから、これらの職の人たちに対し蔭では『スケベの三こう』と云われていたから、本質は何ら変っていないのではないか。
がっこう ぎんこう ポリこう。

 ここで一つエスプリの効いた、書き回しはそれぞれ違うが、古典的な艶話しをどうぞ。
 
 4.ブルゴ-ニュの森
フランスは花の都パリの森にご案内しよう。
貧乏だがパリッ子で情熱的な恋人ジャンとカロリ-ナは、晩春の日曜日の昼下がり、凱旋門エトワ-ル広場から身体を寄せ合い、甘い言葉とキスを交しながら近くにあるブルゴ-ニュの森に入って行きました。
暖かくよく晴れた空、広大な森の中は大勢の人々で賑わっています。二人はいつものように、静かな木陰で思いっきり抱擁を交したくて、森の奥へ奥へと足早に進んで行きました。
小さな小川を渡り暫く行くと、小鳥のさえずり以外物音がせず、静かで小さな日溜まりをつくり、愛を囁き合うには理想的な場所を見つけ、早速二人は腰を下ろしました。
陽のあたる広い柔らかな芝生に、大きな樹木がくっきりと蔭を落としており、ところどころに背の低い潅木が茂みを作り、人の目を遮っています。
静かです。しかしよく耳を澄ますと、少し離れた茂みのそこ此処で愛を交し合う忍び声が聞こえてきます。
ようやく辿り着いた愛の交歓の場所、火のように猛っていた二人はそれらの睦言にも触発され、互いの躯の匂いを吸い取るようにせわしなく首を動かし、寸秒も惜しむかのようにもどかしげにまさぐり合いうのでした。そして柔らかい芝生の褥、もう二人には相手以外に意識するものはありません。 カロリ-ナの尻に敷いたジャンの上着の上で、獣のように激しく幾度も幾度も目くるめく愛を確かめ合い、興奮のるつぼと化して行くのでした。
目くるめく嵐のような愛の宴が続いたあと、荒い息を吐きながらようやく二人は躯を離しました。柔らかな暖かい陽の下、どちらも腰から下はしとどに濡れています。
ジャンは投げ出すように芝生に仰向けに倒れ、しばらく蒼い空に浮かんだ千切れ雲を眺めていました。
やがてようやく荒い息が治り、お互い半身を上げたとき同時に気づいたのです。 (しまったッ)・・・後始末するモノが無い。
カロリ-ナも恋人に逢う時間にそぞろ気をとられ、いつも持っているハンドバッグもハンカチも忘れてきたのです。
少しの間二人は戸惑った表情をしていましたが、ジャンは半身を起こした姿の恋人を見つめ、優しく髪を撫でてやりながら云いました。
「仕方がない 君もぼくも、かわくまでこのままで居よう」
カロリ-ナはつい今し方までの余韻に浸りながら、恋人の優しい言葉に、うっとりとして頷きました。
二人は仰向き、燦々と輝く太陽に、生まれたままの姿をさらしたのです。

さて みなさん、ここで問題! ジャンとカロリ-ナ どちらが早くかわいたでしょう?。
答・  丸干しより、ひらきのほうが乾きが早い。




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釣名人

最近テレビを観ていると、やたら名人が登場する。
昔は書画や工芸刀剣などの匠、歌舞音曲・剣・体術等の道を極めた人を指していると思っていたが、何時の間にか生活の道具造りまで名人が進出している。

私達の少年時代、大人だけでなく少し器用な子供でも必需品として作った道具類、それが今では、竹かごや縄ない、草履・・・に至るまで名人が居る時代になった。
春は山菜採り名人・夏は虫とり名人・秋はきのこ採り・冬は氷づくり名人など、訳の分らない迷人が現れる。
勿論TVのリポ-タ-などは軽いノリで登場させて喋っているだけで、そう目くじら立てる程のことでは無いのは十分承知であるが、名人を連発されている当人はどう思っているのか?。 

むかしから「先生と言われる程のバカでなし」と川柳にあるが、視ている者からすると、名人を連発するたび、バカさんバカさんと言われているのと同義語に聞こえるときがある。 つまらない事に拘わるのも、実は私も十数年前名人にされた経験があるからだ。
神戸・須磨の海釣り公園は自宅から車で格好の距離にあり、よく行く釣り場だ。
入園料と駐車料金の高いのが玉にキズだが・・・

初秋の日曜日、小アジ釣りに行った。
晴れていたが大潮で小アジ釣りには、あまりよく無かった。それでも6時の早朝一番には潮止まりで、12cm前後のアジが入れ喰い状態となり、8時頃までには100匹位になったか!
その頃から大勢の釣客がやってきた。
私の右隣に10歳位の子供連れの夫婦?が陣取った。

3人ともこちらと同じサビキ仕掛けである。
その頃から潮が右から左へ動きだし、5号程度の重りカゴでは斜めに流され釣り辛くなってきた。60歳前後の旦那は、おかしいなぁ、おかしいなぁを連発し乍ら、それでも一所懸命に頑張っている。
こちらは投げる都度、数匹を挙げる。旦那の右側にいた母子は、あまり釣れないのに倦んできたようだ。ちらちら夫と私を見くらべていたが暫くして女房どの、

「お父さん、お隣よくかかっているわ。ほらまたかかった、コツ教えてもろうたら・・」
と小声で言っているが、この親父、頑固者とみえて、

「この間はこの仕掛けでよく釣れたんだ、辛抱辛抱」
といい乍ら、性懲りもなく同じ動作を繰り返している。

約、半時間後、嫌になったのか突然席を立って何処かへ行ってしまった。

すると早速、残った夫人が声をかけてきた。
「お上手ですねェ、ようかかりますなァ、こちらはさっぱり・・・」

今まで旦那の陰になり、つばの広い帽子を被っていたから判っきり見えなかったが、歳は40の後半、色白で眼の大きなやや受け口の美人、こちら好みのタイプ。
たちまちねんごろに教えたくなった。

「流れが強くなってきたからオモリを10号に替えて、やや上手に投げて正面に来たときオモリが底に着く、と同時に50cmほど巻き上げて、すぐ一度だけシャクる、そして竿を流れに逆らわず左へ動かすんですよ」とやってみせる。

数匹がかかる。二度ほど繰り返してみせた。

夫人と少年はソンケイの眼差しで、成る程と感じ入ったようだ。素直なのががいい。自分達でやってみる。
最初はぎこちなかったが、そばから口添えしていると要領が分かったのか2人同時に数匹がかかった。

さァ喜んだ2人、喊声をあげてク-ラ-に取り込んでいる。
それからは夫人とすっかり打ち解けて喋りながら釣っていた。子供は小さいし、旦那と相当歳が離れているから後妻か、それとも連れ子で再婚かな?
好みのタイプと明るい雰囲気でしゃべっていると気分がいい。天気晴朗だ。
そのとき旦那が、のそっと帰ってきて「どうや?」と聞いた。
 夫人は早速
「おとうさん、この名人に教えて貰うたら、ほらこんなに釣れたの、お父さんも早う教えてもろうて釣ったら!?」

途端に機嫌が悪くなったのか隣に座った旦那、黙って先ほどと同じ動作をくり返すが相変わらず、さっぱり釣れない。
女房と子供は交互に要領を教えようとするが、聴こうともしないで頑固一徹、初心を貫いている。

そのうち潮がますます速くなり、女房子供のほうも掛かりが悪くなってくる。こちらは素早く斜め左にシャクって釣果を落とさない様にする。

「やっぱり名人は違うわぁ、こんな潮の流れが早うなっても、よう掛かるんやもん」夫人は感嘆を込めて言う。
見兼ねて、「底へ着くと左へ上げるとよい」と旦那にアドバイスしたつもりが、早速女房のほうが反応、たちまち数匹が釣れた。また喜んで 「名人ありがとう」と顔を向けてくる。

相変わらずのブッ張面の旦那、人の言うことを聞いて釣れば、男の権威に拘わるとばかり性懲りもなく最初のくり返し。
60づらした大人が、すねた子供に似ておかしかった。

「お父さん、折角来たんやから名人の言うこと聞いて釣ったら?!」 途端

「うるさいッ」の言葉を残して、また何処かへ行ってしまった。

さて、名人を連発された、あなたはどんな気がしたか?
美人の人妻に言われては、悪い気はしなかった。やはり私も迷人か!


  最後に釣の格言を!

数を釣って楽しむは、これ上手という。
難しきを釣る、これを名人という。
数を争わず、釣って楽しむはこれ達人なり。

 わたしは、死ぬまで達人どころか名人にもなれないだろう。 いつも上手を心がけているから・・・






  ここで息抜きに艶笑小咄(未性年者読むべからず)を少し。
  
 1.大阪商人の会話 

「久しぶり、おい、このごろ景気どや?」

「アカン、悪イ!」

「そりゃお互いや、それより昔よう遊んだ、夜の景気や」

「このごろサッパリや、 軽石やね」

「ふ-ん!」

(カカトスルバカリ・・踵・・嬶と・・・)





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