應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死9〔第二章〕・四十九日(幽冥界.黄泉)2

四十九日(幽冥界.黄泉)2


法事を終えたあと私は、案の定 冥府魔道の旅についた。

 最初から極楽のうてななどに選ばれるとは思ってはいなかったが?! うそー!。

幽冥の入口である三途(三途とは三悪道、すなわち地獄道・・猛火に焼かれる火道、 畜生道・・互いに相食む血途、 飢餓道・・刀剣杖などで脅迫される刀道、亡者の行くべき三つの途)である。
これからは、生前一度も体験したことのない世界に入っていくのだ。 

体が硬直し、立っているのも苦労するほど息苦しい緊張が続く。外ズラと反対に気が弱くて小さいからか。 いよいよこれから三途の川を渡り、彼岸へ行くのか。

気が付いたとき、ぼーと幽かに見える、陰々滅々とした途を歩いていた。 昼なのか夜なのか定かでない。 

周りを見回すと、私のような姿の人々が音を立てずに、同じ方向に歩いている。 静かで物音一つ聞こえない、生気のない枯れ果てた連中ばかり。 中には男女が手をつないでいるのが居る。 あれは心中したか、何かの事故で同時死したか? それでもよく耳を澄ますと、あちこちで囁き声が聞こえる。力のない声だからひそひそした話し声になるのか? 
 私を追い抜いて行くのもいる。 なにも慌てなくてもよいのに、と思ったとき、後ろの方で初めて明るい声高な話声が聞こえた。 聞き耳をたてると、どうやら三途の川の渡し賃のことらしい。
仲間らしい数人の男連中、中の一人が訳知り顔で話している。

「川の上流にダムができて、水量は減っていないが、瀬は昔と違ってゆったりしているらしい。 渡し賃のほか所々中州があってそこに鬼がいて、昔のように着物を剥いだりしないけど、通行税取ってそれがめっぽう高いらしいよ」

なぜ?と聞くのがいる。

「彼岸のゼニとの交換率が変ってそうなったらしい・・・」
「交換率?あの世の通貨との交換レートが変ったのか?」
「そうそう めっぽう円安.あの世高らしいよ。 そこでゼニ足らんかったら、岸辺でアルバイトして、稼いでから渡るシステムもできてるらしいわ」

何ちゅう世の中だ というボヤキ声でハタと気がついた。 

 むっ 通貨だと?俺としたことが! それ 死ぬ前のおれの本業ではないか。

本来なら当然、あの世通貨の先物予約をしておくべきなのが、まさかこんなに予期しない突然死のために。
生前、考えられる限りの先々まで気を回し、死後の墓の名義まで息子にするほど、用意周到と自慢していた。 ただ女房ドノは、いつもその慌てものぶりを笑っていたが。

このまま川を渡れないとなると、六道の辻で迷うどころか、幽冥界を永遠にさまよい続けなければならない。 今さらアルバイトする体力気力もないし。 

葬式で女房ドノが 
「昔から、6文銭だけで渡してくれる云うてたから、これでエエわ」

と棺の中に穴あき銭数枚を放り込んだだけだ。 こんなはしたガネでは渡れないのは明らかだ。 それでも坊さんにお布施をはずんで、ありがたーいお経でも、ねんごろに上げてくれておれば、特別に成仏(得仏道)できたかも・・トホホ・・。

しばらく思案していたが、足が自然と来た道を引き返しはじめた。


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