應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死12〔第二章〕・四十九日(幽冥界.黄泉)5

四十九日(幽冥界.黄泉)5



やっと入口まで来た。 

入るまえ想像していたより、案外明るく学校の講堂ほど広い。
 
正面に裁きの法廷が設けられてあり、その手前に教室のような部屋が四つ、そこの一つに入って呼び込まれるのを、待つようになっている。

 よねぞうの番が来た。 一緒に部屋に入った、先程の女性が優しく頷いた。

法廷内は三段の高さに分れ、一番高い所に派手なほうを着た、冥界の審判官閻魔大王が座り、中段にうず高い書類と共に、倶生神(生前のその人全ての記録係り)と闇黒童子(エンマ帳係り)が侍り、廷吏は6人。
私は最下段の丸椅子に坐らされた。  
私を廷内に連れた来た廷吏は、私の左腕を掴み、型の古そうなウソ発見機のセンサーを頭に巻付ける。 中段右側の闇黒童子が厳かに宣言した。

「これから審判する おまえの過去は全て この証拠歴の中に記録されているウソ偽りを云えば すぐ機械が反応するから 有り体に申し上げイ」

時代がかったセリフだ。 もう一人の倶生神が、1mもあろうかと思うほど分厚い、私の娑婆歴犯科帳を繰りだした。

まだこちらの世界は機械化が遅れて、オフラインどころか大福帳式のようだ。
こりゃ時間がかかるわいと思ったが、案外早く審問が始まった。

 倶生神が
「おまえ 生前の行いのうち ケシカラン事をした それは11才の秋 学校の帰り 野の地蔵さまの頭に長々と小便を垂れたであろう」
とたんエンマ様の、机の機械がピッピッーと鳴る。 
びくっとしたが、そんな小さい頃のことを聞かれても、覚えているのがおかしい。 こんなことが六道を峻別する因となるのか。
心の底からあほらしいと思ったが、先程の機械の音が気になって思わず、  はい と答えてしまった。この悪いクセは、こちらにきても治らないようだ。
その他昭和34年赤線廃止まで、随分悪いアソビをやったことや、会社で上司や部下を虐めた事、特に女房としつこく云い合った会話を追認させられた。
生前は誰でもやるような、取るに足らない事柄を、芝居がかって詰問する。

と 突然、「太夫さまご審決を」と闇黒童子が上段に向って云った。
太夫さま と云われた閻魔大王。 エヘンと声の皮をむき、ほうの袖を合せ威厳を繕って 「よく聞くように・・」 と前置きし、
「おまえは本来なら六道のうち、上から2番目の人間界へ戻してやってもよかったんだが、先程おまえが認めた、地蔵様にお小水をかけた。 これは大変罪深い。 なぜなら地蔵菩薩は古えより六道の辻で、衆生を化導されておる、極楽にお導きなさっている菩薩じゃ。 その地蔵様に無礼極まる罪を犯した。 それにお前は気が小さいくせに欲深い、夢にもよくドロボーを追いかけて、うなされたであろう。それはモノに対して執着心が強い欲どしいからだ。 
 また許されないのは、折角女房が、おまえの子を孕んだにも拘わらず、自分たち自己益だけのために、何人も水子にしたであろう」


「そこで判決を云い渡す。  阿修羅行きじゃ!」


ええッ 阿修羅? ほんまかいな 修羅とは激しい闘争.激戦.ねたみや我慢強く猜疑心の強いものが行く所。 なんでおれが。 そのとき再び、
「もう一つ云い置くことがある。 三途の川を渡るときよく見るがよい。 賽の河原でおまえの犯した罪を償うて塔を立てようとし、石積みをしている水子たちをよく見て行け。 この子たちを救われるのも地蔵菩薩さまじゃ」。

両手の甲に 三途阿修羅行きのスタンプを押され、廷内から放り出された。
最後のご託宣は反論できず、生前罪の意識が片時も消えたことが無かった。  とにかく阿修羅の世界へ行くしかない。 蹌踉(そうろう)として覚束ない足取りで、賑やかに呼び込みをしている、ケバケバしい門の一つの前に行く。


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