應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死14〔第二章〕・四十九日(幽冥界.黄泉)7

四十九日(幽冥界.黄泉)7



再び広場の入口の近くまで来たとき、うしろから女性の呼び掛けに振り返ると、先程選別所の前で、私の後ろに並んでいた中年の美人だ。

「いま判決を頂きました」と云って近づいて来た。 改めて正面から見ると、色が抜けるほど白く眼が涼しい。 背は大柄の方だ。 あなたはどちらへ・・と聞くので修羅です と答えると、

「まあうれしい あたしもですわ いいお連れができて・・」

いやになれなれしい。 が、イヤな気がしないけど、こちらは文なしだ。 そんなことなど知らぬが仏の女性は、あなたのような人が、なぜ人間界に行かなかったのか、と柔らかい京都弁で聞く。

「いやア 小さいころ地蔵さんに小便かけたのがタタッて・・」
 と云うと白い歯を見せて大笑いし、やはりあなたらしい と云う。

 私を知っているんですか?と問うと、
「いいえ さきほどの立ち話で、大体あなたの性格判ります」

八卦見のようなことを云う。 では御一緒にまいりましょう と形のよい尻を振って先に歩き出した。

数メートル行って私の動かない気配を察し、どうしたの・・とけげんな表情で戻ってくる。

「いやァ それが あんまり突然死やったので渡し賃持ってへんのですわあ」
バツの悪い顔で正直に云うと、再び明るく笑って、
「なんだ そんなことなら気づかいいりまへんえ、あたし ぎょうさん持ってるから 心配せんとォきやす」

腕をつかんで身を寄せ、同道を促す。 よねぞうは昔から色が白くて大柄な美人に弱いのだ。

三途の川を渡る大船の特等室に入った。 それも個室という贅沢さだ。 窓が大きく取ってあり、平床の川舟なのでほとんど揺れない。  
二人は紫檀のテーブルを中に応接椅子で向い合った。 


この美人は京都生れ育ち、月山勢(せい)と名乗り、享年38才。 おせい と呼んでくれと云う。


落着いたところで、見も知らない私に なぜこんなに親切にしてくれるのかと聞くと、独り旅が淋しくて と少し泪ぐんだ。 なにか訳があるのか?

まあ長い旅、こちらも願ったりかなったり、とびきりの美人と旅ができるなんて おれはついてるわい とつい先ほど、選別所で説教されたのを忘れて、心では不真面目な事を考えている。




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コメント

いよいよ…

いよいよ三途を渡るのですね…このお話を読んでいると、彼の地のことが身近に感じます(笑)
きっと「よねぞう」さんの普段着の姿が、そう感じさせるのでしょうね…。
まだまだ、楽しみにしております。

  • 2007/06/06(水) 07:39:09 |
  • URL |
  • *moko* #JhveqONE
  • [ 編集]

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