應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死17〔第三章〕・快楽(けらく)の日々

快楽(けらく)の日々2


二ヵ月が過ぎた。

夕食後、そろそろ寝ようか と言ったとき、おせいさんがグラスに寝酒のワインを注いだ。 きらいな方ではないから、数杯を過ごす。 いい気持ちだ。

暫くしておせいさんが俯いたまま、ため息混じりに「聞いて欲しいことがある」と言う。

「水くさい おせいさんの事ならなんでも聞いてやるよ」と答える。

なんども「笑わないで」と念を押したあと、
「結婚してほしい」 と言った。
「あなたとは三途を渡ってから、ずっと一緒だった。 もう私の気心も判ってくれていると思う。 あたしも、あなたが私にぴったりの人だと、最初の第一印象から思って・・・そのまま変っていないわ。 前世には私にいろいろあったけど、この世にやって来て、心の底から愛しい人に巡り合えた。 この人と二人で最高の家庭を築きたい。 そしてどうか私を哀れと思うなら、前世の不幸を取り返えさせて。 女の私から言い出すのも気が引けるが、このままだとひょっとして、あなたを他の人に取られちゃたまらない、お願い結婚して」

要旨、こう言うことを柔らかい京弁で、綿々とよねぞうに訴えた。
 
たいへん驚いたが、口説かれてイタク感激、前の世でもこんなクゼツを女性から聞かされたことは一度もない。 おせいさん ありがとうよ。

 翌る日、よねぞうは、けだるい朝を迎えた。 ゆうべは少し過ごした。
先程おせいさんは、役所へ結婚届を出しに行く、と云って出て行った。 
いまよねぞうは考え中。 にぶーい男でも「俺もとうとう骨を抜かれたか?」と思わずにはいられない。 それにおせいさんは俺のことを、
「心の底からほれた人。他の人に取られるのを怖れるから早く結婚を・・」とせがんで嬉しがらせた。

しかし彼女が居ない時に何となく、もう一つすっきりしないもどかしさを感じる。 いまもそうだ。 
何もかも段取りがよく、早すぎるのではないか。 まだ知り合って二ヵ月だ。
まるであの世で全て計画を立て、そのシナリオを消化して動いているような硬質な感じが起る。 こちらが一文なしとはいえ、どだい家を買うときぐらい、せめて俺の感想を聞いてくれてもいいじゃないか、水くさい。 また不可解なことに、自分の部屋に入るのを許さず、カギを掛けて覗くことも許さない。 

けだるい頭で恨みごとを反芻(はんすう)していたが、すぐに (そうはいっても髪結いの亭主じゃなぁ)と自虐的になる。  


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