應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死20〔第三章〕・せいの謀りごと3

せいの謀りごと3

いよいよ前世に戻ると決めた夜、せいは夫のよねぞうに、一度前の世に戻りたくはないか と聞いた。 二つ返事で「戻りたい」と云うだろうと思っていたが、あんに相違して、 「べつにィ あんまり帰りたいと思わん」

意外な答えが返ってきた。 よく聞いてみると、残った家族は女房以下、薄情ものが多く、そろそろ近づくお盆にも赤飯炊いて祝っている、と思う と子供のような、しょげた顔で肩を落とす。 きゅーんと母性愛を刺激する姿だ。

 また、そんなに簡単に前世に戻れるのか? と不思議そうに聞き、
「それよりここでおせいさんと二人、新婚気分でいつまでも浸っていたい」

せいは夫のそう云う口説はうれしいが、なんとしても初盆の施餓鬼(餓鬼世界に堕し飢餓に苦しめられている生類や無縁亡者に飲食を施す)にまぎれ、法会の日に合わせて行かねばならない。

そこで「私はどうしても一度帰らなくてはいけない事があるので、あなたは留守番し、一人で行って来てよいか?」と心にもない言葉を吐いた。 とたん、

「嫌だ おせいさんと一緒に行く」

一も二もなく賛成、単純だがすぐ乗ってくるところが可愛い。

そこで、「それなら これから説明するが、前世に行くために決められたことがあって、必ず守らなければならない」と前置きし、
「私の先祖は えんのおずぬ なの」
聞いたよねぞう、驚いた。 あの役行者の子孫? ほんまかァ ふーん京都にはいろいろの人が居るなあ と感心する。

「だれでもお盆には、自分を祭ってくれる家に帰れるわ。 まして新仏は盛大にお迎えして待ってるはずよ、あなたは遺族のことを僻むが、たぶん大丈夫。 それから8月15日の精霊流しの晩、こちらに帰らなければならないけど、空中遊泳しながら往復できるのよ」

よねぞうはいきいきとして、楽しそうに話すおせいさんを見て、反対するのは何だか悪い気がする。

「その間ふたりはずっと一緒だけど、お盆の15日だけは自由にしていいわ。 あたしも両親や兄弟の顔も見たいから、別れて行動しましょう・・」

「だけどあたしが決めた、落ち合い場所と時間には必ず来て頂戴。 帰りは必ず一緒に帰らないと、あなたは終生冥界をさまようことになるの 分った?」

と、おどしつける。 俯いたままよねぞうは 『それならまだ見たことのない、あんたのご両親に会って、こちらで一緒になった挨拶したい』と云う。

「ふたりはもう死んでるのよ どうして挨拶なんかできるの?・・」

「あっ そうか、うっかり忘れとった ほな蔭ながらあんたの家族の顔でも見ておきたい」

「あなたのお子やお孫さんたち、家族に会いたくないの?そんなに薄情者?」

「うーん いっぺん覗いたろかなぁ・・」
やっとその気になってきたようだ。 向こうに着くまで未だ時間がある。 それ迄に完全にその気にさせなければ・・自分の復讐計画の段取りが狂う。 

おせいさんは心に決めた。


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