應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死23〔第四章〕・生霊の帰還1

生霊の帰還1
  
 おせいさんの背中に乗って、私は無事この世に戻り京都に着いた。
何はさて置いても、これから自分の提供した臓器受供患者の状態を確認すると、おせいさんはいう。 
その理由は、一部肉体を置いてこの世に入った限り、いずれその機能が停止したら、その臓器を取り戻さなければならない冥界の掟がある。 従って常々その臓器の状態を、把握していなければならない。
 そのお陰で、年に2回は前世に帰ることが許されている、と云う。

まず自分の臓器を摘出した、中京区にある病院へ直行した。 
入口で「そのとき手術を受けた患者名簿で住所を確かめる」 と云って、おせいさんはナ-スセンタ-の方に入って行った。 
私はその後姿を見送った後、広く明るい待合室の椅子に腰を掛けた。こんなとき死霊は便利なものだ。 娑婆の人たちには姿が見えないから堂々と行動できる。 時計を見ると午前11時過ぎだ。
この病院は患者の治療や対応全てに亘り、高い評価を受けており、人気が高く今の時間でも人がやたら多い。 
私は所在なげに、前の大型テレビの画面をみる。 
半年ぶりのこの世のテレビだが、相も変らず軽薄なタレント集団が、くだらない昼番組をやっている。
「こいつら まるで白痴学校を優秀な成績で出たのか」と毒づきたくなる。
画面が変って天気予報。 これも生前から、よねぞうの気に喰わない画面だ。
予報に対して当る確率は3割程度で、明治時代とあまり変っていないと、生前に雑誌で読んだことがある。 半日前に立てた予報が当らない時が多い。 それにもっとも腹に据えかねるのが、誠心誠意ウソをついた予報士がその間違いを、その後謝ったのを聞いたことがないことだ。 いまの俺には関係ないが!

約1時間足らずでおせいさんが、書類を手に帰ってきた。
資料保管室から受供者の全てが分った と云い、患者は福島.東京.三重.大阪の4都府県に亘っているらしい。 ぜんぶ女性だ と云っておせいさんは、ほっとした顔をする。
うん それはそうだろう。 女である自分の臓器を、見ず知らずの男の人に植えつけられ、今も動いているのは、あまり気持のええもんではなかろう。 男の俺でも何となく分る気がする。
 2人は職場復帰、1人は自宅療養中、残る1人は入院中とのことだ。
今日を数えて2日間で、受供者の状態を診て廻らなければいけない日程だ。
「時間がないので、これから患者を診て廻るから、あたしから離れないで」
  
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