應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死25〔第四章〕・移植患者めぐり2

移植患者めぐり2

いま最高級のステ-キの夕食を終え、満足して部屋に帰ってきた。
もう一度シャワ-を浴び、軽いワインを開けて二人はソフア-でくつろいでいる。 よねぞうは今日の渋谷の住人の結果を聞きたくて、水を向けた。
今までよねぞうを、細やかな気遣いでイタク嬉しがらせていたおせいさんが、トタンに見るみる不機嫌な顔になって 「感じワルイッ!」 と吐き捨てる。

おせいさんは、彼女の独り住まいの部屋に入ったとき誰も居なかった。 それで、未だ会社から帰っていないのか、と思って暫く待つことにした。
部屋全体をざっと見回したところ、女性にしては乱雑で、なんとなく私生活が乱れているような印象がある。 10分もしないうちに、外の廊下で男女の忍び笑いと共にドアが開き、からみ合った二人が入って来た。 
二人は靴を蹴飛ばすように脱ぎ捨てて、そのまま絨毯に転がり、すごいキッスを続けたまま、お互い下半身の衣服をもどかしげに脱がせっこする。
男が上になってすぐセックスを始め、女は声を上げながら男の上半身の衣服を脱がせている。
「そのときあたしは初めて女の顔を見たわ 今まで男の頭が邪魔して見えなかったの。 見た瞬間 ああこれはいけない 顔が黄色く濁って黄疸症状が出ている 化粧で隠しているけどあたしには分る 腎機能が正しく働いていないのだ 女は嬌声を上げて50才ぐらいの男にしがみついていたわ 気持悪くなってあたしはすぐ部屋を出た」 
「せっかくあたしが上げた大切な腎臓を、いま一番節制すべきなのに、ああしてあの女は、享楽のために日を送って腎臓をつぶしている・・あの女はもう長くはないと思うわ・・・」
話し終っておせいさんは怒りの眼を伏せた。 夜のしじまが二人を支配する。
しかしその夜、おせいさんは何故か、いつにも増して激しかった。

翌日ホテルを出た二人は午前中に三重県.津市に飛んだ。 今度は肝臓の提供を受けた、おせいさんと同じ37才の主婦だ。
大きな昔風の百姓家で、その患者は陽の当る広い庭を前にした縁側に、すだれを掛け、部屋に続く廊下で籐椅子のベッドに寝ていた。
おせいさんは初めてよねぞうを連れて、青白い顔をした患者のそばへ行った。
眠っているようだ。 私はその顔をみて、この女性 どことなくおせいさんに似ているな、そんな感じがした。 
おせいさんは暫く何も云わず、じっとその寝姿を見ていたが、親身のこもった声音で、
「養生して長生きしてね だんなさんによろしく・・」
やさしく小さな声でつぶやいて、別れを告げた。 門を出て振り返った私の目に、役場太一郎 と肉厚の表札が映った。

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