應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死26〔第四章〕・移植患者めぐり3

移植患者めぐり3


 「最後は大阪.吹田市にある国立循環器病センタ-にまだ入院中で、心臓移植を受けた30才の女性なの」と、おせいさんの背中に乗るとき聞かされた。
「ええ?そこは私の家のそばだ」と云うと、おせいさんは「知っているわ」と不機嫌に答える。
「これから金剛.大峰.奈良生駒の山を越えて飛ぶから、下を見ないで・・」
その意味は、にぶ-いよねぞうにでも判る。 おせいさんに言わせると、役の行者が転げ落ちた謂れのあるエリアだ。 しかし生駒の山を越える手前、奈良市の上に来たとき、学園前の長女夫婦の住まいを見たい誘惑に抗しがたく、気取られないように首をねじった。 焼きムラの出てきた古い瓦屋根が見えた。
生駒を越えたとき、思いきってそっと寝返りをうつ。 おせいさんは背中の気配で、私が下を見ているのを察したはずだが、何も云わない。
ああ 半年ぶりに見る懐かしい大阪、淀川が光っている。 

病院は生前の私の家の前だ。 道路を隔てて斜向い、大袈裟だが大声を出せば聞こえる近場にある。
ここに神戸から来ている33才の女性が入院しているはずだ。
センタ-の玄関を入るとき、おせいさんに「私の家がそこだからちょっと覗いてきていいか?」と聞くと「ほんの少しならいいわ」と投げやりな物言いだ。 次の待ち時間を打ち合わせて、我が家に近づいた。
胸がドキンドキンと高鳴る。 今日はお盆の始まりだが平日で13日の金曜日、元女房ドノのほか、誰か居るかな? と、余り期待せずに家に近づく。 
家のたたずまいは変らないが、庭木は夏の繁りで枝が伸び放題。雑草も生えたまま。 ガレ-ジを見るとバタバタ(スク-タ-)が無い。 どこかへ出かけたか? いま午後二時半過ぎだ。暑い。 腹が立ってくる。
家の中は私のいなくなった後、ほとんど変っていないようだ。 ただオレの居ついていた居間だけが机や家具が無く、代りに長椅子が占領している。
表座敷に入った。 仏壇を見る。 いつもと違うのは、壇前に脚のついた白木の須弥壇が置かれ 両側に細長い明灯が立てられ、経木と共に生け花が豪華だ。新仏の迎えの用意か。 その壇の上に、おお おれの戒名があるではないか。 真新しいのが立てられている。 なになに・・・ 
 
 祥最名院偉闇変香居士   

どう読めばよいのか、またその謂れは?浅才な俺にはよう分らん。 そこで上段の親父のと比べてみる。 祥雲院寿岳房俊居士  祥と院が同じだが、親父のほうがなんとなく、賢く香り高い感じがするではないか。 
それに比べ、俺のは 闇と変が、何となく気に入らない。 まあ明日もう一度来る、それまでに解析しておこう。
2階に上がる。 昼寝用の寝ゴザがそのまま。せめて部屋の隅にでも置け。 源三郎の部屋を見て、物凄いやりっ放しの光景に改めて寒心する。 こいつは昔から整理の出来ない欠陥人間だ。 あらゆるハイテク機械が部屋を埋め尽くしている。 足の置場のない書類の山 紙屑が散らばりホコリだらけ。タバコのにおいが部屋に充満し、他人を寄せつけないバリア-をつくっている。 
この中に100萬円ほどの純金の延べ棒を、5~6本転がしておいても、おそらく数年は発見出来ないだろう。 
 
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