應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死35〔第五章〕・墓詣り

墓詣り


 今日は彼岸の中日、朝10時すぎ、よねぞうは生前の自宅へ向った。

 少し雲のかかった春の空、蝶の舞う公園を横切り家に着いた。 
さぞや仏間は彼岸らしく、すっきりと飾ってくれてあると期待してきたが、不在のようで誰もいない。
無人の家の中に入った。 確かに仏壇には灯火台.献花台に季節の花や供物が上げられ、いつものしきたりに従った供えをしている。
よねぞうは暫くそれを眺めていた。
それから無人の家中を探索したが、ほとんど昨年夏と変っていない。 
居間の応接物や、壁の絵が少し変った程度だ。 
2階に上る。 源三郎の部屋の乱雑さは相変わらずだが、パソコンとその周辺機器類が倍増している。
再び階下に降り椅子に坐っていたが、ふと自分の墓の有様に興を起こし、北摂霊園に行く気を起こした。

おせいさんの時空泳を借りる訳にいかないので、テクテクと相当きつい山路を登る。 生前は車でしか見回ったことが無いから息が切れる。
カ-ブは多いが舗装されており、けっこう車の交叉がある。勝尾寺方面に行く車も多いのでヒッチハイクしたいが、残念ながら今は己の姿が人には見えずままならない。 それでも3時間余りかけて坂を登り切った。

霊園は大阪府が開発.茨木高原C.Cに隣接し、広さは甲子園球場の10倍以上あり、擂鉢状の地形に35年の歳月をかけて30萬墓を造る超大規模だ。
さすが彼岸の中日だけあって大勢の墓参者の姿が見える。 わたしの墓地は北の端、一番高いところにある。

自分の墓地に着いて驚いた。 なんと巻石だけだった墓地に黒御影の石塔が建てられ、その周りに元女房ドノや子供たち(源三郎.晶子.善二郎と孫の夏子)が手を合せ、各人が数珠をまさぐっている。 神妙な顔つきだ。
 
ヘ-エ 集まるとアホばっかり喋っている、うちの家族にもこんな姿があるんだと一驚すると共に胸が熱くなる。

 やっぱり詣ってくれていたんだ。

近寄って墓標を見る。 高さは周りの墓石と余り変らないが、やはり例の
「祥最名院偉闇変香居士」と彫られ、横に建立した年月日、それに長男鷹丸と女房ドノ(ヒミコ)の名前が並記され、女房は赤い信女(生前)だ。
イヤミヘンコは気に入らないが、まあ忘れずに墓石を建ててくれただけでもうれしい。 しかも皆で詣ってくれている姿。

よねぞうは暫く春の陽にふくらんだ山桜の蕾を眺め、またその眼を墓を取り巻く家族に移す。 
胸の内にひたす暖かい想い、せき上げてくる感情を必死に押えていた。




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