應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死36〔第六章〕・水難1

水難1

 役所せいが夫と別れて10時すぎ、父母の健在を確かめるため京都上賀茂の実家に着いた。
顔にめっきり皺の増えた父が、庭の一部をヒバ垣で囲った50坪程の菜園に畝をつくり、腰をおとして春の種まきをしている。 
母は春の陽射しを浴びて、枯れ山水の見える庭に面した縁側で、猫背になって趣味の刺繍に余念がない。 どちらもまあ平穏な様子。

安心したせいは、そのまま伏見桃山へ急いだ。 そこには生前別れた夫の生家がある。 
昨年の盆に来たとき、秘法を使ってある仕掛けをしてあったのを確認するためだ。 
夫はK大学法学部の気鋭の助教授で、人気が高く将来を嘱望されていた。
それがいつか、せいに隠れて教え子の女子学生と不倫のうえ、なんと5才程の男の子まで成していた。 それも偶然葵祭の群集の中に見つけて判った。
せいのような女が、迂闊といえばこれほど鈍なことはない。

それはさておき、せいの最も我慢できず許せないのは夫は当然として、その両親だ。 いつまでも日陰の子としておく積りはなかったはずだ。 いつか今の妻と別れるのを当然期待し、実現するのを待っていたに違い無い。


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