應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

よねぞうの死37〔第六章〕・水難2

水難2


 JR奈良線の桃山駅で降り、寺の角を曲って暫く歩くと小学校の近くに旧家の家並が見えた。
その中でも築地を巡らせ風格のある堂々とした門構えの邸、表札に吉田太一郎とある。 
横のくぐり戸の上にも太一郎.華子、と妻の名前を並記した横札がかかり、この家の住まい人を表示してある。
せいは死ぬ前まで、何度も出入りしたその門の前を通り過ぎ、横道に入りじっと目をつむり念を集中させ邸内の様子を探る。 

幾つもの部屋の奥。
主の太一郎は、息子誠一のコネでK病院からやって来て、かかりつけとなった医者の診断を受けている。 側に妻の華子が心配そうにその医者と、夫を交互に見つめている。
ふとんの上で横臥した太一郎、これが昨年までの義父かと驚くほど病み衰え、上半身をさらけた胸は、骨とたるんだ皺の醜い姿をあらわにしている。

医者はいつもの注射を打ちながら、額の立皺を濃くした表情だが、
「まああまり変わりがないようです 食欲はないようですが、できるだけ精をつけて薬はかかさず飲んでください」
検診の終った医者は席を立った。 
医者の見送りから部屋に戻った妻は、病みほうけた夫に布団を直してやっている。 
どちらも無言だ。

その妻の華子も、せいのいた生前は、どちらかといえば太り気味であったのが、今は痩せて十才も歳をとったかと思われるほど老いて見える。 色の白かった顔が、今では手足も共に青黒く、頭は黒いベレ-のような帽子をかぶっている。
 


にほんブログ村 小説ブログへ

ブログランキング



スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。