應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死42〔第六章〕・わな2

わな2


 誠一と結婚したのはせいが22才のとき、いま振り返ってみても穏やかな15年の歳月だった、と思う。 
表面おだやかな性格と、時が経つにつれ法曹界では頭脳明せきな少壮学者として認知され初めた誠一、名前にも誠実を表す一字を持った夫をせいは、全幅の信頼をおき心から深く愛していた。  

 それが一転、発覚したときの夫の 非はおまえにある、と人変りしたように激しく云い募る、それも精緻な論理まで交えた言動と表情、その落差の大きさは、あまりにもショックが強く、暫く精神的に立ち直れないほどであった。

浮気、そして子供までつくっていた5年あまり、その片鱗さえ見せない完璧な二重生活を、察知できなかった愚かな己のうかつさも倍加して、前夫に怨念をたぎらせたのだ。

せいは彼岸で、阿修羅の世界に迷いこんで来たような、淡白なよねぞうと所帯を持った。 しかし表面纏綿(てんめん)とした新婚生活を装いながら、復讐心は片時も忘れるどころか、いや増していた。

さすが阿修羅の世界だ。 住んで暫くして知ったのは、なんと怨念の持続.習得倍加を目的とした、いろんな学習塾や、予備校めいたのが幾つもあるのには驚いた。
そこは前述した瞋に(しんに)の世界に身を浸し、怨念.復讐の鋭敏さとその方法を会得することであり、その習得に通うのは、俗世で様々な過去と体験を持つ人々らしい。


せいはよねぞうに気取られないよう、細心の注意を払いながら、時々家を留守にして、その一つの塾(サ-クルといってもいい)に参加し研鑽に励んだ。 


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