應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死46〔第六章〕・いろ仕掛け1

いろ仕掛け1


 ホテルの大型ベッドで、咽が渇き目が覚めた。 
腕時計を見ると朝の8時過ぎだ。 

サイドテ-ブルの水を取ろうとして躯をねじって気がついた。
横に髪の毛の長い女が丸まって寝ているではないか。 
驚いてベッドから立上がり声をかける。

「きみは誰だ?」

肩に手をかけ揺さぶる。 薄目を開け、うるさそうに緩慢な動作で上半身を起こした女は目をこすり乍ら、居丈高に突っ立った誠一を見て逆に驚いて、

「な-にい?・・」

 下着姿のその女性は25才前後、色の白い胸の張った大きな目が印象的だ。

「なぜここに居る?」

誠一の激しい剣幕に驚いてベッドから離れ、 ほんとうに覚えていないの?!と、不思議そうな表情をする。

そのとき誠一の二日酔いの頭は、うす紙のはがれるように記憶が戻り初めた。

「いっしょに車でここに来たの覚えていないの?」
「?・・・!」

誠一は自分の躯と周りを見回す。 女性は下着姿だが、自分はちゃんとホテルの浴衣をまとい、部屋に乱れはない。 女は不審そうな顔つきで、

「あなた ここに帰ってからあたしを二度も抱いたのよ 覚えてないの?・・」

ほんとうに不審そうな表情を崩さない。

「あたし ゆうべのあのお店でいっしょに飲んでたユミよ 思い出してよ・・」

誠一の頭に惑乱が始まった。

 彼は昨夜からのてん末を、ユミという女から聞いて、やっと全て蘇ったのは少し経ってからである。 あんなに我を忘れるほど酔ったのは初めてだ。

それにセックスのこともおぼろげだ。 だがユミは すご-く強くッて二度もお代りしたのよ・・と、あけすけにその時の描写を喋る始末。
 
 その晩ホテルに所勝三が訪ねて来た。
最上階のラウンジバ-に誘い、誠一を見て意味ありげな笑顔で、ごきげんいかがでしたか と云う。
誠一は所氏に、気恥ずかしい表情で昨夜の礼を云った。

「気にいって貰えればいいんですよ もしよろしかったら東京に来ると、時々逢ってやって下さい 本人にも納得させますから・・」

まるでお取り持ちの言いぐさだ。 誠一は曖昧に笑った。

古都京都に住んでいるといっても、物心ついたときからいわゆる水商売の、これらの世界とはずっと縁の薄い生い立ちで過ごして来た。 今は特に学究生活の象牙の塔にこもり、およそ縁無き衆生だと思っていた。 金で解決する、後腐れのないこんな世界ねえ。 この歳になるまで実体験は初めてだ。

東京妻 それもいいか?!

 誠一はそれからは上京するごとユミと同宿し、何度もめくるめくような逢う瀬を楽しんだ。 本名 田中マキコ 群馬県出身だという。 

かかりはいくらこちらが払うと云っても、全て所氏が清算するように仕掛けてあった。 (まあいいか 京都でお返しをすればいいのだから) 誠一の潔癖さは、だんだん慣れ薄れていく。


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