應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

よねぞうの死56〔第七章〕・苦脳4

苦脳4

ところが予兆もなく暗転が起ったのは、今年の冬、週刊誌にバクロ記事が出た直後からである。 嵐のようにどの記事やコメントも、真偽を織りまぜ針小棒大に、 これでもか と世間に吐き出した。

いままで自分が出演していた、バラエティ番組の事前録画は当然放映中止、それどころかその番組で連日、逆報道される始末。 

勿論それにすこし遅れて、政府系の諮問会や研究会等の出席停止.辞任を求められた。 大学も休職を強いられ、受け持っていた講議.講座も無くなった。
今は以前に比べ、丸裸同然になっている。

もちろん司法関係の、しかも大学でそれを本職として歩んできた誠一には、恩師も含め、検事や敏腕弁護士等の知人友人は大勢いる。

しかし世の中、当人が逆境になると掌を返すように離れていく。 できるだけ係わりたくない、つまりそれら関係者は陽の当るあいだ、表面上見せかけの関係者に過ぎなかったし、結論から誠一に徳がなかったと云えばそれまでだ。

今のところ事件そのものは、誠一の係わりについては大した事でなく、これが例えば芸能界やスポ-ツ関係なら、色恋など一つの勲章として、話題作りになるものを・・

しかし誠一のような、過去に挫折を経験した事のない男は、我慢ならない出来ごととして、自身にムチを打ち続けている。
すでに30才台で講師になり、40才前後で教授.そして将来は部長、名誉教授の席まで可能性あるような者には、一般人には逆に理解し難い心裡だろう。 しょせん閉鎖された学者の世界で、自己完結していたようだ。

前妻のせいに比べ、たま子は結婚してみると極めて平凡で、どこにでも居る一般的な主婦であった。 せいのような適切な表現と、ときには機智にとんだ会話は望むべきもない。それに父母の長い疾病だ。 父の原因不明の病いに続いて起った母のガンと転移、自分自身のスキャンダル、まるでなにかのタタリのようだ。 その上いま自分自身、誰にも言えず、どこへ訴える事もできない、巧妙な脅迫を受けているのだ。 

 
 校庭の樹の蔭で、息子を待ち乍ら誠一はまたK興業.北島の言葉を反芻していた。

にほんブログ村 小説ブログへ

ブログランキング




スポンサーサイト

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。