應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死59〔第七章〕・脅迫3

脅迫3

 誠一は、今までの収入のほとんどは断たれたが、自分や父母の多少の貯えの他、万一のときは、家屋敷を処分してもいいと腹をくくっていたから、竹内の申し出は即座に断った。
「今後のことははっきりお断りします。 それより過去の私に対して下さった、貴社の出費の清算をお願いします」

さすが竹内は、誠一の直截的で性急な物言いに鼻白んだ顔で、隣の北島を見る。 北島が、

「吉田さん、昔から 覆水盆に返らず と云いますね。 世の中、あなたのおっしゃるように『金銭で清算して、過去のことは全て終り』という訳にはいかないですよね。 書いた過去は一生ついて回り、リセットがきかない。 よくお考えになったらいい、これは私からのアドバイスです」

そばから竹内が、

「まア 今すぐに、ご返事頂かなくとも結構ですよ、損得も含めよくお考えになって、後日よいご返答お待ちします」

一息入れて北島が、いま気がついたような声を出した。

「そうそう吉田さん、貴方のお邸はたいへんご立派ですね。 さぞ由緒あるお家柄でしょうな。 またあの周りは閑静なお邸街で、さすが古都京都ですな。
ところで吉田さん あなたに小学2年生の男の子がおられますよね、可愛い盛りだ」


どうやら住所や、個人的な家族まで調べ上げてあるようだ。

「目に入れても痛くないでしょう。 だけど気を付けて下さいよ、最近はどこでどんな事が起きるか分らない時代でしょ・・」

私も最近、所用でお宅の近く御香宮神社へ行ってきたが、側に国道が走り、その他の道も古く曲った狭い道路が多く、車の往来が激しく驚いた、と続ける。


「子供さんの通学など、万一事故など起きないよう、十分気をつけてやってくださいよ」


交通事故に気をつけましょう・・・


一般の人が聞くと単なる交通事故の標語にすぎないが、今の誠一にとっては、明らかに子供を人質に取った、いつまでも気の休まる事のない巧妙な脅迫.どう喝の言辞だ。

司法を生業にしていた誠一はいま、完全にワナにはまったことを認めざるを得なかった。

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