應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死64〔第八章〕・せいの嫉妬1

せいの嫉妬1


よねぞうは不安を胸にマンションに帰ってきたが、せいは相変わらず、自分の部屋にこもったまま出てこない。 よねぞうはこれ幸いと、居間に入って応接の長椅子に寝転んだ。 
いま会ってきたマリ-という女性との会話を反芻する。 
自然と頬がゆるむ。

約1時間ほどしてせいが姿を現し、何処へ行ってきた? と聞く。 
帰りの道すがら考えていた答をよどみなく喋る。

「この前の大通りを真直ぐ歩いて、橋を渡ってそのまま行ったが、同じような家並ばっかりで飽いてきたので、途中のベンチで休んで帰ってきた」

帰るとたぶん聞かれると想定して、帰り道、川を越えて実際の風景を眼に入れてきたのだ。

「ふう-ん 橋の向う側にたしか看板架かっていたでしょ」

「うん なんかカラ-公園どうこう書いてあったけど、興味ないから終いまで読まなんだ」

ふう-ん? 少し疑りぶかそうな眼をしたがそれ以上詮索せず、せいは夕食をつくるため居間を出ていった。

よねぞうはほっとして額の汗をぬぐう。 うまくいった。



3日後の午後、再びよねぞうはせいの許しを得て外出した。 今日はマリ-と公園で会う約束の日だ。 

急いでエレベ-タ-で降り、足早で大通りに向う。 
それをせいは自分の部屋の窓から眺め、なぜ急ぎ足なんだろう?と疑問に思った。
(あの歩き方は目的をもった脚力だ) 大急ぎで後を追う。 
よねぞうは脇目も振らず公園に直行、ゲ-トをくぐる。
 
その後をつけたせいは公園の入口で、しばしためらったが意を決して、思いきってゲ-トに入ろうとした、とたん音を立てて観音とびらが閉った。
係員が気の毒そうな表情をする。

やはり駄目か!とつぶやいた。 
せいはこの世界へ来てすぐ、一度来て試したことがあり、今と同じように入園を拒否された。


せいのような怨念の深い一級人は、やはり入園出来ないらしい。

(いいわ、帰ってきたらよねぞうを問いつめてやろう)と引き返した。


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