應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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よねぞうの死71〔第八章〕・わかれ.迷い

わかれ.迷い

以前、阿修羅行きの判決を受け広場で迷っていた時、人間界へ戻るという10人ほどの集団が、迎えを待っていた同じ石の丸ベンチに行き、腰をかける。

(さあ どうする 人間界に戻って生まれ代り、人生イチからやり直すか それとも前世の続きを営むか 阿修羅でせいとの生活を続けるか)

沈思黙考だ。

三つの選択はどれを採っても一長一短だ。

1つは、生まれ代った人間界。 どんな境遇で生まれ、育つか分らない。ましてや男か女かさえ分らない。 もしおれが女にィ・・・?
生前よく、もしもう一度生まれ変わったら、俺は 私は こんなになりたい、こんな生き方をしてみたい。 誰しも思う願望だ。
自分が今まで生きてきて得た、知識.智恵.常識.経験.情報などをベ-スに、その願望を夢想する人が大半ではないか。

しかしそれは、それまで自分が生きてきて果たせなかった夢、望んでも得られなかった動機と結果などで、起りもしない生まれ変わりという、その願望の裏返しではないか。 いま人間界で生きている人たちはそう思っているだろう。

今よねぞうに、その 起こりもしない 運命現象が起ろうとしているのだ。

よねぞうは迷う。 これはそんなに甘くはないぞ、と。

誰でも、絵に書いたような人生を送る運を持って生を受けるとは限らない。 金持ちの家に生まれ、頭脳明せき.容姿端麗.幸運.健康や経済的、それに家族にも恵まれ、望むことはみんな成就、そんな人間に生れるのは地球上で数人か。 ほとんどは中途ハンパのケッカン商品だ。 その大半がなんとかやりくりして生きている。  
さてオレ、どんな境遇に生まれ育つのやら?


2つ目、これは元の家に戻り、あちらで生きていた時の延長だからハッキリしている。
カオス(渾沌)のような無秩序な一族が、たぶん今もめいめい勝手に生きているはずだ。 そこへある日突然、昏睡から目覚め舞い戻り、芝居の二幕目の続きをやればいい。 しかしこれも先程、もうあまり時間がない、と審判官が言っていたから、そう長いオツトメできないだろう。 
帰れば家族一統が(せっかく静かになった四囲が、またやかましい騒音に悩まされる)と顰蹙を買うだろうが。 そして近所の連中と、ゲ-トボ-ルで日を過ごす程度か。

まあしかしよく考えれば、あと短い刻か知らないが、元の家庭に戻るということは、長い間なじんで身の丈に合い、自分の体臭のしみついた、いつも着ている服のような安堵感。 これはこれで捨て難い。


3つ目、おせいさんの許へ帰るのだ。
去年の冬この広場で、審決の出た二人が初めて会い、同じ船に乗り阿修羅界に行き結婚した。
最初の頃は、濃密な結婚生活でよねぞう、うるおいの無い枯れ葉色の墨絵の景色を除けば、情こまやかで美人の妻に、いたく満足した毎日を送った。
ただ、せいにはよねぞうが生活の中で、どうしても不審な一面を感じ、踏み込めない部分があった。

たしか阿修羅行きの船の中で、前の夫に復讐するため、自殺をしたほど執念深い自分の性格を縷々話していたが・・・。
過去3回帰ったときに、その復讐とやらを実行し、目的を遂げたのか? 聞いてもせいは言葉を濁して答えず、ましてや単純で深読みの出来ないよねぞう、しつこく聞き糺すこともせず、だが一抹の疑惑を抱えたくらしであった。 
この一点を除けば、おおむね満足した再婚生活を送ってきた。

だが最近、せいの言動に変化が感じられ、ときには気味のわるい程感情の起伏が大きく、特にここ10日ほどは故意に冷淡な態度に、よねぞうはやや嫌気がさしている。 ここへ来るときも見送ってくれなかった。 なぜか?
とはいえ、せいと別れることに一抹の寂寥と哀感が混じる。 願わくば、両極を往き来できるような両義性が許されるなら・・・この期に及んでよねぞう、まだ欲の深い考えを持っている。


改めて腕組みし長いため息をつく。

公園の入口で、しばらく停まっていた人間界行きの循環バスが動きだした。 
次のバスが来るまでに決めなければ・・・。

 決断力のないよねぞう、六道の辻で迷っている。

読者諸姉.諸兄 さあ あなたならどうする?
                              完.



長いあいだ、冗漫な駄作におつき合い頂き、誠にありがとうございました。

 慎んで、これからの貴方様の幸多い人生をおくられることを祈念します。

                         平成19年師走


 追記
平成20年正月から、高野応其の今までの書き溜めたものも含め、エッセ-を順次掲載いたします。
テ-マは最初、主に女性たちの生態を分析します。 その結果、非難.ひぼう.怨嗟.偏見だと、時には敵役を覚悟して頑張ります。 まず最初は、

『大阪のおばちゃん』から・・
                         乞う 御期待を。




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