應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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釣名人

最近テレビを観ていると、やたら名人が登場する。
昔は書画や工芸刀剣などの匠、歌舞音曲・剣・体術等の道を極めた人を指していると思っていたが、何時の間にか生活の道具造りまで名人が進出している。

私達の少年時代、大人だけでなく少し器用な子供でも必需品として作った道具類、それが今では、竹かごや縄ない、草履・・・に至るまで名人が居る時代になった。
春は山菜採り名人・夏は虫とり名人・秋はきのこ採り・冬は氷づくり名人など、訳の分らない迷人が現れる。
勿論TVのリポ-タ-などは軽いノリで登場させて喋っているだけで、そう目くじら立てる程のことでは無いのは十分承知であるが、名人を連発されている当人はどう思っているのか?。 

むかしから「先生と言われる程のバカでなし」と川柳にあるが、視ている者からすると、名人を連発するたび、バカさんバカさんと言われているのと同義語に聞こえるときがある。 つまらない事に拘わるのも、実は私も十数年前名人にされた経験があるからだ。
神戸・須磨の海釣り公園は自宅から車で格好の距離にあり、よく行く釣り場だ。
入園料と駐車料金の高いのが玉にキズだが・・・

初秋の日曜日、小アジ釣りに行った。
晴れていたが大潮で小アジ釣りには、あまりよく無かった。それでも6時の早朝一番には潮止まりで、12cm前後のアジが入れ喰い状態となり、8時頃までには100匹位になったか!
その頃から大勢の釣客がやってきた。
私の右隣に10歳位の子供連れの夫婦?が陣取った。

3人ともこちらと同じサビキ仕掛けである。
その頃から潮が右から左へ動きだし、5号程度の重りカゴでは斜めに流され釣り辛くなってきた。60歳前後の旦那は、おかしいなぁ、おかしいなぁを連発し乍ら、それでも一所懸命に頑張っている。
こちらは投げる都度、数匹を挙げる。旦那の右側にいた母子は、あまり釣れないのに倦んできたようだ。ちらちら夫と私を見くらべていたが暫くして女房どの、

「お父さん、お隣よくかかっているわ。ほらまたかかった、コツ教えてもろうたら・・」
と小声で言っているが、この親父、頑固者とみえて、

「この間はこの仕掛けでよく釣れたんだ、辛抱辛抱」
といい乍ら、性懲りもなく同じ動作を繰り返している。

約、半時間後、嫌になったのか突然席を立って何処かへ行ってしまった。

すると早速、残った夫人が声をかけてきた。
「お上手ですねェ、ようかかりますなァ、こちらはさっぱり・・・」

今まで旦那の陰になり、つばの広い帽子を被っていたから判っきり見えなかったが、歳は40の後半、色白で眼の大きなやや受け口の美人、こちら好みのタイプ。
たちまちねんごろに教えたくなった。

「流れが強くなってきたからオモリを10号に替えて、やや上手に投げて正面に来たときオモリが底に着く、と同時に50cmほど巻き上げて、すぐ一度だけシャクる、そして竿を流れに逆らわず左へ動かすんですよ」とやってみせる。

数匹がかかる。二度ほど繰り返してみせた。

夫人と少年はソンケイの眼差しで、成る程と感じ入ったようだ。素直なのががいい。自分達でやってみる。
最初はぎこちなかったが、そばから口添えしていると要領が分かったのか2人同時に数匹がかかった。

さァ喜んだ2人、喊声をあげてク-ラ-に取り込んでいる。
それからは夫人とすっかり打ち解けて喋りながら釣っていた。子供は小さいし、旦那と相当歳が離れているから後妻か、それとも連れ子で再婚かな?
好みのタイプと明るい雰囲気でしゃべっていると気分がいい。天気晴朗だ。
そのとき旦那が、のそっと帰ってきて「どうや?」と聞いた。
 夫人は早速
「おとうさん、この名人に教えて貰うたら、ほらこんなに釣れたの、お父さんも早う教えてもろうて釣ったら!?」

途端に機嫌が悪くなったのか隣に座った旦那、黙って先ほどと同じ動作をくり返すが相変わらず、さっぱり釣れない。
女房と子供は交互に要領を教えようとするが、聴こうともしないで頑固一徹、初心を貫いている。

そのうち潮がますます速くなり、女房子供のほうも掛かりが悪くなってくる。こちらは素早く斜め左にシャクって釣果を落とさない様にする。

「やっぱり名人は違うわぁ、こんな潮の流れが早うなっても、よう掛かるんやもん」夫人は感嘆を込めて言う。
見兼ねて、「底へ着くと左へ上げるとよい」と旦那にアドバイスしたつもりが、早速女房のほうが反応、たちまち数匹が釣れた。また喜んで 「名人ありがとう」と顔を向けてくる。

相変わらずのブッ張面の旦那、人の言うことを聞いて釣れば、男の権威に拘わるとばかり性懲りもなく最初のくり返し。
60づらした大人が、すねた子供に似ておかしかった。

「お父さん、折角来たんやから名人の言うこと聞いて釣ったら?!」 途端

「うるさいッ」の言葉を残して、また何処かへ行ってしまった。

さて、名人を連発された、あなたはどんな気がしたか?
美人の人妻に言われては、悪い気はしなかった。やはり私も迷人か!


  最後に釣の格言を!

数を釣って楽しむは、これ上手という。
難しきを釣る、これを名人という。
数を争わず、釣って楽しむはこれ達人なり。

 わたしは、死ぬまで達人どころか名人にもなれないだろう。 いつも上手を心がけているから・・・






  ここで息抜きに艶笑小咄(未性年者読むべからず)を少し。
  
 1.大阪商人の会話 

「久しぶり、おい、このごろ景気どや?」

「アカン、悪イ!」

「そりゃお互いや、それより昔よう遊んだ、夜の景気や」

「このごろサッパリや、 軽石やね」

「ふ-ん!」

(カカトスルバカリ・・踵・・嬶と・・・)





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