應其

高野應其(たかのおうご)のエッセイと小説。

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釣アラカルト2

 川から海への転向

 38歳まで川釣り専門であった。冬はハスやニゴイ、初夏から晩秋にかけてアユ釣りが専門で、主に素掛(段引き)だった。うなぎ.なまず.ねほう他
 住まいが和歌山から大阪、しかも北摂の豊中へ移ってからも10年余り紀ノ川へよく通った。 遠い川へ何故、と思われるが、
当時、戦後の日本が経済の復旧から勃興期に入っていたが、反対に陰の部分である公害が全国いたる処に発生した。しかしまだ国民の意識も今ほどでなく、公害よりも景気の上昇を望んだ。
日曜日、テレビの連続お笑い番組でテ-マソングの合間に、こんな台詞が入るのが人気を博していた。

「スモッグ.スモッグ言うけどなア、これが大阪のエエとこだァ」

まだ此花区の7本煙突から吐き出す煙が、大阪の景況を占うバロメーターであった時代、田舎の都市から出てきた者からみて京阪神の河川はまるでドブ川のような気がした。従って周辺の川は敬遠した。
それと紀ノ川はクセまで知り抜いた通い慣れた川であることと、マス科の鮭ではないが、潜在的に生まれ故郷が恋しかったか。

ところが或日突然、座骨神経痛らしき痛みが起こった。
鮎釣りは早朝から夕暮れまで下半身裸のまま流れの冷たさに曝されていたし、特に秋の落ちアユシ-ズンは晴れた日でも胴から上はカンカン照りだが、下はそぞろ身に染む冷たさに耐えなければならなかった。最近のように、真冬の水の中でも自在に戯れることのできるウエットス-ツが普及しておれば、今も川釣りをしていただろう。 
「こんな若さで、神経痛に一生つき合わされ兼ねないのはご免だ」と、ぷっつりやめた。

暫くして勤めの場所が神戸となり、得意先で釣り談義をする機会が多くなった。
さすが神戸は海の街、釣り好きが大勢いた。その中でも釣り歴30余年のベテラン理髪店主の東さん、話上手でたちまち血が騒ぎだした。

曰く、「海ほど意外性のあるものはない 川は昔おばあさんが洗濯に行って桃太郎さんを手に入れた程度 海は違いまっせェ 時には変った外道も上がるし・・」と。

或る秋の休日、東さんの友達と3人で、明石の対岸、淡路島の岩屋(いま明石大橋の架かっている)の波止へ行った。今日はかれい狙いだとのこと。
 過去に海の経験は、主に波止から竹ざおで小アジをウキ釣りした程度、取りあえず道具仕掛けは東さんから借りた。川では見られないガイド付きカ-ボンロッド竿・スピニングリ-ル、当時はまだ高価であった。

 現場に着いて仕掛けを教わり、取りあえず第一投したが、うまく飛ばない。
周りが親切に教えてくれるがどうも勝手が悪い。20mも飛ばない、左右にブレたり足元に落ちたり。暫く見ていた2人、うんざりしてきたのか

「まァ落ち着いてやりなはれ、そのうち、うまくなりますよ」
と慰めとも憐憫ともつかぬ言葉を残して離れて行った。

それでもなんとなく要領が判ってきたので力を入れて投げた。
が、10m程の水面に落ちただけだ。
途端、リ-ル止めのネジが弛んでいたのか、リ-ルが足元のコンクリ-トに落ちて音をたてた。わッと思うまもなく転がって海へトポーン。
頭の中が白くなり、竿を置くや大切なリ-ルを引き上げねばと大急ぎで釣り糸を手繰り寄せた。約200mも巻いている糸はいくら手繰っても果てしない。

どこかで見ていたのか離れていた2人がとんで来た。ようやく手に重みが掛かり海底のリ-ルに行き着いたようだ。東さんとその友達は、横から慎重に、慎重にと声をかける。
どうやら海底で障害にも合わず、やっとリ-ルが顔を見せた。3人は顔を見合わせて、それぞれの思いで暫く笑った。こちらは借り物の道具が揚がってきて、やれやれ安心と虚脱状態である。

投げた仕掛けを手で引き上げにかかった。変に重くてヒクヒクと強い引き、
むッ?、そばから東さんが、

「たぶん根掛かりやろ、切ってもエエから引き上げていいよ」と声をかけて呉れるので思い切って引っ張った。が、どうやら魚が掛っているらしい。

「なにか付いているらしい」と言うと2人は「どうせガッチョぐらいやろ早よあげて」と言う。
猛烈な引き、糸で掌が切れそう、が今のアクシデントで逆に気が昂ったのか、強引に引き上げた。しばらくして水面で腹を返したのはなんとそれは真鯛、周囲の連中がわっと声をあげる。東さんが、うまくタモですくいあげて呉れたのは40cm余の正真正銘の明石ダイであった。

私は2人に向かって「すんません、すんません」と片手で後頭部を撫で乍ら、意味もなく頻りに謝っていた。 暫く経って思い出した、なるほど、これがほんとの海の桃太郎か!と。                      
  
 
             ごあいさつ

高野おうごのブログ、一応今回の『釣りアラカルト』をもちまして、終了させて頂きます。
冗漫で拙い文章に、長い間おつき合い頂き、ありがとうございました。 衷心よりお礼申しあげると共に、皆様方のますますのご多幸を祈念いたします。
ありがとうございました。
                            08.彼岸.






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  • 2009/09/11(金) 03:58:17 |
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  • 2010/02/07(日) 03:21:37 |
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